第9回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

マウスと被験者50人で試した還元水の有効性

肝機能障害と疲労回復に還元水は果たして効くのか?

今回から、いよいよ電解水に関する各種の研究結果を紹介することになります。まずは還元水に関する特徴的な研究を連載し、次いで酸性電解水に移る、といった順番で進めて いく予定です。電解水の安全性も重要な研究 課題ですから、追って取り上げることになります。ともあれ研究テーマは順不同で掲載して いきますので、毎回、バラエティに富んだ、ユニークで興味深い研究結果をお伝えする場となります。どうぞお楽しみに。

マウスを使った実験の結果は?

その手始めは、岡山県岡山市の岡山大学内に 事務局を置く、岡山実験動物研究会という団体が 1997年10月発行の研究会報に掲載した「アルコール長期飲用(6カ月)による肝臓機能ならびに 脂肪代謝への影響に対するアルカリ性水の効用」 というテーマの研究論文です。

ここでいうアルカリ性水とは還元水を指しています。当時、日本では約300万台の整水器が普及していました。還元水の研究成果としては、消化管 内異常発酵の改善といった報告がすでに出されていました。

これに対し、岡山実験動物研究会は、アルコールの飲用による肝臓機能障害や脂肪代謝に与える還元水の影響を検討しています。

マウスを用いた実験の概要は次のとおりです。①水道水だけを飲ませる群、②市販ウイスキーを水道水で濃度10%に希釈して飲ます群、③アルカ リ性水(還元水)を飲ませる群、④市販ウイスキーをアルカリ性水で濃度10%に希釈して飲ませる群、に分けて検討。なお、土曜日から月曜日の夕方 までを“休肝日”に設定しています。

また、②群と④群には夜間のみアルコールを飲ませ、昼間は希釈に用いた水(水道水とアルカリ性水)だけを飲用させました。通常、(人は)アルコールを夜に飲むものだから、ですね。

これを続けて3ヵ月目と6カ月目に、それぞれ臓器の重量、血液中のGPT、GOT、中性脂肪、総コ レステロールなどを測定しました。

その結果は――。マウスは人間のようにアルコールが好きではないようで(?)、夜間にアル コールを飲ませた②群と④群では、明らかに夜間の摂取量が減っていました。

ほかにも面白い結果が得られています。アルカリ性水だけを飲ませた②群は、他の群に比べて餌をよく食べる傾向があったのですが、その割に体重が極端に増えることはありませんでした。

また総コレステロール値を測ると、アルカリ性水で希釈したアルコールを飲んだ④群のマウスの方が、水道水で希釈したアルコールを飲んだ2群のマウスより低い値になりました。

通常、慢性的なアルコール飲用は肝臓に負担がかかり、コレステロール値も高くなる原因になりますが、この実験では、還元水がその影響を抑える可能性が示唆されました。

還元水は「疲労」に効くのか?

次は、千葉大学大学院・人文社会科学研究科が2009年9月に発行した『千葉大学人文社会科学研究』(現在の『人文公共学研究論集』)に載った「日常生活時の体調および心理状況に及ぼすア ルカリイオン水長期摂取の影響」という、たいへん興味深い研究結果です。

これは健常な大学生50人(男女25人ずつ)に4週間、アルカリイオン水(還元水)を毎日1,500ml 飲んでもらい、①体調、②排便・排尿、③睡眠、④身体感覚の4分類(全28項目)のアンケートと、疲 労に関する自覚症状を、摂取前、摂取2週後、摂取4週後に答えてもらって評価したものです。

日本では数々の栄養素について目標摂取量が設定されていますが、水の摂取量については明記されていません(厚生労働省は「あと2杯飲もう」をスローガンに、1日2.5リットルの飲用を成人に勧めていますが)。しかしアメリカやドイツなどでは、国が推奨量を定めています。

この千葉大の研究においても、飲んでもらうアルカリイオン水の量(1,500ml)の設定の根拠については特に言及されていません。また実験がおこなわれた季節についての記載もありません。

そこで結果ですが、アンケートの全項目で判断すると、摂取前と2週後、摂取前と4週後で、スコアは5%レベルの有意な改善が見られています。全28項目のうち、特に12項目が疲労に関係するアンケートでした。結果は、疲れやすい感じが減少し、立ちくらみやけいれんの自覚は5%レベルで改善。イライラ感の減少も見られました。

睡眠に関してはもともと寝つきの悪さなどの自覚 はない人の方が多く、特に変化はありませんが、朝 の目覚めは5%レベルで有意な改善が見られました。また、1%レベルの有意差で身体が軽く感じるようになった、有意さはないが持久力の改善を感じるようになった、という結果も得られました。

2つの実験の限界と問題点

疲労自覚症状調査においても改善が見られました。ただし、この実験は、本人に分からないように還 元水以外の水(プラセボ飲料)を飲ませることで得られるデータと比較していませんし、被験者が揃って一定の生活状況下にないことも推測する上で問題となります。

しかし、アルカリイオン水が身体的、精神的コンディションの改善に有効であると推測されたことは意義があります。その理由として、アルカリイオン水が水道水よりミネラルの含有量が多いからだ、という 考察もされています。ただし、昨今は意識してミネラル分を摂取する人が増えているため、この実験でミネラルの影響について論じるのは難しいと思います。

また、私見では、この実験に参加した大学生が4週間にわたって、意識して多く水を飲むようになったのか、いままで飲んでいた水をアルカリイオン水に変えただけだったのか、という質問があれば、この結果がアルカリイオン水のためか、単に脱水を改善したことで得られたのか、判断ができたのではないかと考えます。

いずれにしろ、紹介した2件の実験は、マウスを使用したり、わずか50人でしかも設定が不十分だったり、という極めて限定されたものです。その結果をすぐ“普遍的に援用”することは許されません。このことを最後に協調しておきます。

参照

「アルコール長期飲用(6カ月)による肝臓機能ならびに脂肪代謝への影響に対するアルカリ性水の効用」

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/20658

「日常生活時の体調および心理状況に及ぼすア ルカリイオン水長期摂取の影響」

http://www.gshpa.chiba-u.jp/content/files/annual/annual2009[1].pdf

第8回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

電解水研究のキッカケを作ったTV番組の功罪

「驚異の水」の触れ込みに対し

国が求めた科学的検証の結果は?!

電解水を巡る歴史の記述を続けます。まずは前号の末尾で「大きな騒動になってしまう」 と書いた、その一件からです。

1992年6月以降、日本テレビの「きょうの 出来事」というニュース番組で、還元水と強 酸性電解水が「驚異の水」として、しばしば報じられました。同局の別の報道番組「NNN ニュースプラス1(ワン)」でも大きく取り上げました。

その内容は、まず病気に関連して、アトピー、肝硬変、糖尿病(壊疽)、水虫・床ずれ、 胃・十二指腸潰瘍、MRSA(黄色ブドウ球菌) 等々について、実際に病院で強電解水を活用し治療した例を報告。さらに、ゴルフ場や農場で農薬代わりに強酸性電解水を使って効果をあげていることも報じました。

衝撃だった「水で病気は治る!」

わたしは当時の番組を見ていません。しかしインターネットで検索すると、番組の当該部分がかなりアップされていたため、視聴することができました。

たとえば糖尿病の合併症の糖尿病壊疽の場合、しっかりと還元水を飲み、強酸性電解水に患部(足先)を浸ける治療を長期間続けると、壊疽が改善して自分の足で歩けるようになる、といった画像を見せています。

あるいは、還元水の飲用によって腸内の毒素が減り、解毒の役目を担っている肝臓の機能が改善するために全身の臓器の機能が改善すると推定される、という説明。さらに、それによって胃・十二指腸潰瘍などいろいろな病気の顕著な改善がみられる、という解説もされています。

こうなってくると、還元水さえ飲んでいれば病院も薬もいらないよねって思う人がたくさん出てきてもおかしくありません。ちなみに、還元水さえ飲めば、悪しき生活習慣を変えなくても病気が良くなる、ということはありません。もちろん、還元水だけではなく、どんなものでも一緒です。

ともあれ、番組では患者さんの改善したとされる画像が披露されていますから、それなりに説得力があります。したがって、同番組で、キャスター自ら「大きな反響がありました」と強調していたとおり、世間の注目を集めることになったのです。

しかし、還元水の医療効果としては、1965年10月8日に厚生省(当時)が各都道府県知事あてに 通知した「慢性下痢、消化不良、胃腸内異常発酵、制酸」だけに認められていました(酸性電解水はアストリンゼント効果があると認定)。

厚生省が求めた「科学的検証」

このような背景のもと、92年9月にアルカリイオン整水器協議会が設立され、啓蒙活動、業界倫理の確立、調査研究が始まりました。次いで、国民生活センターが実施した商品テストをきっかけに、マスコミが還元水の効果効能を疑う報道をおこない、これが国会(参議院厚生委員会)でも取り上げられる事態となりました。

そして厚生省からアルカリイオン整水器協議会に対し、科学的検証を実施するよう要請があり、1993年2月、同協議会は京都大学医学部の糸川嘉則教授に、アルカリイオン水(還元水)に関する検証を委託しました。こうして糸川教授を委員長とする検討委員会が立ち上がり、検証が始まったのです。

検証内容は、1.アルカリイオン水の飲用における安全性試験、2.客観的試験方法による有効性試験、3.国民生活センターが提示した疑義に対する回答、4.アルカリイオン水に関する科学的研究の推進でした。

翌年に出された検討結果(中間報告)は、1日0.5~1リットルのアルカリイオン水(pH9~10)の 継続飲用は胃腸症状の改善効果があり、長期飲用(試験では1年間)しても臨床上安全性の問題はないとされました。

さらに、その効果は、胃酸過多、腸内異常発酵、 便通異常(慢性下痢、便秘)の胃腸症状改善のように改めるのが望ましいとしました。

「二重盲検比較試験」とは?

報告書をもう少し詳しく見ていきましょう。昔から“便通異常には水を飲むと良い”といわれてきた ことが、実際に臨床的に実証されたという記載があります。

これを見ると、その当時は(いまとは違って)多くの人が慢性脱水になっているという認識はなく、 また消化器の専門医においても便秘の原因に脱水があることがわかっていなかった、ということに気づかされます。そのため、0.5~1リットルの還元水の飲用をテストしたのではないかと想像されます。

一方、ラットの実験では腸内異常発酵の抑制機構の一端が証明されています。ラットは自分が欲しいだけ水を飲んでいるでしょうから、人間のように脱水状態にはなっていないと想像されます。

ところで市販もされている解熱鎮痛剤ですが、これは胃粘膜障害を起こす原因の一つです。そこで普通は、胃粘膜を保護する胃薬と一緒に処方されます。ラットの実験では、還元水に胃粘膜保護作用があることが実証されました。

この時点でそのメカニズムは解明されませんでした。ただし、「おそらく水素が関与しているので は」という推察がなされていました。

こうした研究成果は、93年に設立された一般財団法人・機能水研究振興財団の機能水シンポジ ウムや日本医学会総会で発表されています。そして最終結果は99年に発表され、「アルカリイオン水(還元水)は有用」との結論を導き出しました。

ちなみにこの検討で用いられたのが「二重盲検比較試験」という手法でした。薬(還元水)か偽薬(浄水)のどちらかを飲んでもらい、効き目を比較します。飲んでいる側は医師も被試験者もどちらを飲んでいるのか分かりません。これは「暗示効果」を避けて、最も正しい試験結果を得るための手法です。この方法によって還元水の安全性や有用性が確かめられたのです。

こうした検討結果などを受けて、科学的根拠に基づく機能水研究をいっそう推進するため、2002年に、学者、研究者を中心に日本機能水学会が設立されました。 次回以降、こうした学会などによる研究成果を、 なるべく分かりやすく解説していくことにします。

参照

文中の、1992年6月、日本テレビ「きょうの出来事」の「驚異の水」文中の15シリーズを一挙にご覧頂けます。

第7回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

水の電気分解の原理と電解水生成器の歴史

化学用語も出てきて少々面倒だが

やはり原理はおさえておきたい。

そもそも水の電気分解(electrolysis)とはいったい何のことでしょう。それはこのように定義されています。外部から電気エネルギーを使って水に電圧をかけることにより、陽極(プラス)側で酸化反応、陰極(マイナス) 側で還元反応を引き起こす、水を化学的に分解する操作。今回はこの原理をもう少し詳しく説明してみましよう。

皆さん、ご存知のとおり、水の化学式は H2Oです。実は水はこのH2Oだけでなく、他の物質も含んでいます。それがミネラルです。ミネラルは現在わかっているだけで114種類もあります。

そしてわたしたちの身体にとって欠かせないミネラルは、カリウム、カルシウム、鉄、亜 鉛、ナトリウム、マグネシウム、リン、セレン、銅、クロム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、コバルト、硫黄、塩素の16種類です。

このほか水によく含まれているミネラルには、カルシウムとマグネシウムがあります。この両方がたくさん含まれていると硬水で、少ないと軟水とされています。

そもそもH2Oというのは中性(pH7)です。 何もしていない時には、水の分子はごく一部 が水素イオンと水酸化イオンとして存在しています。この水素イオン濃度が高いと酸性で pH値は7未満となり、水酸化イオン濃度が高いとアルカリ性でpH値は7より大きくなります。

電気分解では水に電極をつけてスイッチを入れて電圧をかけます。そうすると陽極(プラ ス側)にはマイナスイオンが引き付けられ、水分子が電子を失い酸化されます。同時に陰極ではプラスイオンが引き付けられ、水分子が電子を受け取って還元されます。

このように陽極側では酸素と水素イオン(H2)ができて酸性となり、陰極側では水素と水酸化物イオン(OH-)ができてアルカリ性になります。

言い方を変えると、酸化は電子を失うことで、還元は電子を受け取ること。その結果、前 者では酸素ガスと水素イオンが発生し、後者では水素ガスと水酸化物イオンが発生します。ちなみに還元水の細かい泡は水素ガスです。

では水に含まれているミネラルはどのようになるのでしょうか。ミネラルは水の中ではプ ラスイオンとして存在しているため、陰極側に引き寄せられます。

還元水を作るときには、電気分解でできた水を分けるために隔膜が必要です。隔膜がないとせっかく電気分解をしても元の水の分子に戻ってしまって、アルカリ度が低くなります。ちなみに水素生成が目的の場合は、隔膜がないものが使われています。

■「シンノオル」から始まった歴史

水を電気分解することによって酸性電解水と還元水を得られる――ではこの方法はどのように開拓され、どんな経緯をたどって現在に至っているのでしょうか、ここで電解水生成器の歴史を振り返ってみましょう。なお以下の記述は、エナジックインターナショナルも会員の「アルカリイオン整水器協議会」のホームページに多くをおっています。

1931(昭和6)年ごろに、シンノオル電機という会社の諏訪方李氏が、水と電気の関係に着目し、 研究を開始しました。その後も研究を重ね、電解水の植物の影響について研究を始めました。そして1952(昭和27)年、最初の電気分解装置を開発しました。2年後には農業面(稲作)で活用できる器械を作り、さらに医療面での活用を念頭に調査・研究が重ねられました。

註:シンノオルは漢字で神農王留と書きます。これは神農王が宿っているような機械ということで名付けられました。神農王とは古代中国で医と農を司る神さまと言われています。

そして1958(昭和33)年、多くの医師や一般の利用者による臨床実験・使用体験を基に、「シンノオル液製造機」という名の還元水生成器が開発されました。ここから現在の隆盛の大本を作った動きが始まります。

1962(昭和37)年、長野県と京都府の業者からそれぞれ厚生省(当時。現・厚生労働省)に電解装置が持ち込まれ、医療機器としての製造認可の申請が出されました。しかし各地の水道水の質が違うため、同じ性状の電解水を生成できない、という限界に突き当たりました。

その解決策として、乳酸カルシウムを添加し安定的に生成するという方法が取られ、1966(昭和 41)年に、ようやく製造承認されて、医療用物質生成器として薬事法(当時)の適用を受けることができたのです。

■厚生省が電解水の薬効を承認

話は前後しますが、厚生省は1965(昭和40)年10月8日に、次のような内容の厚生省薬務局長

薬発第763号各都道府県長宛]を発出し、電解水の薬効を公式に認めています。

すなわち、還元水(アルカリイオン水)は、消化不良、胃酸過多、腸内異常発酵に有効。酸性水は収斂作用、アストリンゼント効果がある。これ以降、医療用電解水生成器として製造承認を受けた器械が、次々に市場に登場してくるようになります。

また、装置としての改善も進みました。1979(昭和54)年には、水道の蛇口に直結できる連続式電解水生成器が承認されました。水道とつなげて直接、電解水を生成できる、というのはたいへん便利な仕組みで、一般家庭での普及も進みました。ちなみにエナジックインターナショナルのレベラックシリーズも、もちろん連続式です。

このように進化発展し、社会一般の認知度も深まってきた電解水生成器ですが、1992(平成4) 年6月、あるテレビ局のニュース番組が還元水を 「驚異の水」と取り上げたことが発端になって、大きな騒動になってしまうのです。

(以下、次号へ続く)

Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ Vol.6

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

 身体の自動調節機能と水のpHとの関係は?

水の電気分解で生成する還元水は

身体の酸性化に何をもたらすのか?

わたしたちの血液のpHは7.4(+0.05)のアルカリ性になっています。そして細胞の中のpHは 7.0で中性に保たれています。

しかし、わたしたちはいろいろな食べ物や水を摂取するので、その代謝の過程で常に酸が作られ ます。身体のpHを一定に保つため、呼吸で炭酸ガスを排出しています。

わたしたちは体がしんどい時に呼吸が早くなるのを経験しています。酸素が足りなくなったためではなく、血液が酸性に傾いていたために元に戻そうと、身体が自然におこなっている場合があります。

また、過呼吸症飲群といって、精神的にストレスや不安を感じた時に無意識に呼吸が増えてしまう病気があります。酷い場合には意識を失ってしまいます。この時、血液のpH値は正常よりもアルカリ性になっています。

■飲み物食べ物のほとんどは酸性

もう一つ重要なのは腎臓です。腎臓は血液をろ過していらないものを尿として排出する機能があります。体が酸性に傾いている時は、尿中にたくさん酸を排出して調節しています。お肉をたくさん食べると尿は酸性に傾き、野菜をたくさん食べるとアルカリ性に傾きます。

それ以外にも肝臓や胃腸が一生懸命頑張って調節しています。わたしたちの体はpHを一定に保つために努力をしているのです。 わたしたちが普段一番目にする水道水は、pH5.8以上8.6以下と決められています。弱酸性から弱アルカリ性までの間ですから、身体はあまり働かなくても良さそうです。

しかし多くの人は水ではなくて何か混ぜたものが大好きです。たとえば100%オレンジジュース。 身体にとても良さそうですが、実はpHは4.0です。 これからの季節に欲しくなる人が多いビールはpH4.3,スポーツドリンクはpH3.8と、どれも酸性です。コーヒーはpH5~6、緑茶はpH6ぐらいです。 わたしたちが普段口にしている食べ物、飲み物には、酸性のものが本当に多いことが分かります。

そこで登場するのが還元水になります。水を電気 分解して陰極側にできるアルカリ性の水です。

このお水は日本では1931年から研究が始まり、1960年には健康に有益な水として、医療に利用されはじめました。そして1965年には当時の厚生者が慢性下痢症、消化不良、胃腸内異常発酵、(胃酸を中和する)、および胃酸過多に有効だと謳って良いと認めました。

天然にも還元水は存在しています。ただし、現代社会のいろいろな汚染に伴い、こういう水は減ってきたと考えられますが一有名なのがフランスのルルドの水、ドイツのノルデナウの水、メキシコのトラコテの水です。日本では日田天領水(大分県)や白山命水(鳥取県)などがあります。

これらの水は別名“奇跡の水”とも言われるもので、その水を飲むと病気の人が元気になるとされて有名になったものです。これらは地下からの河水になりますが、温度が高い所水が温泉です。

日本にはたくさんの温泉があります。そこでアルカリとして認められていた温泉を調べると、中に天然の水素をたくさん含んでいることがわかったところもありました。

■天然の還元水(湧水)の効用とは?

源泉を使っている温泉の中には、浴槽にコップが置いてあって飲んでも良い、としているケースがあります。長野県に旅行した時に、普段、観光客が行かない温泉に連れていってもらったことがあります。地元のお年寄りが銭湯のように使い、飲用もしていましたが、皆さん、お肌はきれいだし、お元気でした。天然の還元水は調べるともっとあるかもしれません。

そうはいっても、残念ながら、ほとんどの人は天然の扱みたての還元水を日常的に使用することはできません。「ここのお水はおいしいから、と汲んで帰って家で飲んでみたらそうでもなかった」という経験をした人がいるかもしれません。保存容器のせいかもしれないし、湧水などの近くで気分が高揚していた影響かもしれない。または、みたての水に含まれていた成分が抜けてしまったためかもしれません。

地下にあって地表に出てくるのが水ですから、空気に触れた途端に酸化が始まります。整水器で水道水を電気分解して作る還元水は、出てきたばかりの水にたとえることができます。

水道水の味がまずく感じる一番の要因は、塩素や配管の錆などですが、それを取り除いた後の味に大きく関与しているのがミネラルの量です。これは原水がどのような水かによって決まります。日本は土壌にミネラル分が少ないために軟水が多いのですが、沖縄のように硬水に近い水のところもあります。どの水をおいしく感じるか、というのは育った環境も影響しています。

■還元水はなぜ胃腸症状に効く?

還元水というのはどのように作られているのでしょうか。簡単に説明しましょう。

水道水に含まれている塩素などの物質を除き、浄水にした後に電気分解をして酸化還元反応を起こさせます。酸化側(陽極またはプラス極)には酸素と水素イオンが含まれています。そして還元側(陰極またはマイナス極)には水素と水酸化イオンが含まれています。同時にミネラル成分も含まれていますから、元の水よりも濃度としては多くなります。

酸化というのは錆びること、それがつまり身体の老化です。還元は元に戻すこと、よく聞くアンチエイジングですね。身体はpHのバランスだけでなく、この酸化、還元についてもバランスを取るように働いています。

酸化している水より還元している水の方が身体 に良さそうだ、ということは、なんとなくわかると思います。しかし、なんで胃腸症状の改善につながるのだろう、と疑問に思われるかもしれません。この点を巡って、これまでいろいろな研究がなされてきました。それについては次同以降、お話をしていきます。

Dr.マリが綴る「水と健康」AtoZ Vol.5

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

電解水を作る原材料 水道水の水源を考える

それにしても水道水の味と安全性は

なぜトレードオフとされるのか!?

日本ではいま、蛇口をひねるときれいな水が出るのが当たり前になっています。このきれいな水は、浄水場で「凝集沈殿→ろ過→消毒」という処理工程を通じて作られています。ではその水源はどのようなものなのでしょうか。日ごろ、レベラックシリーズを使って水道水を電気分解し、生活全般に活用しているわたしたちにとって、水源について知っておくことも大切です。そこで今回は水道水の水源を取り上げてみます。

■都会の水はなぜうまくない?!

よく聞く話が、「田含に帰ると水はおいしいのに、都会の水はなんだか消毒臭くておいしくない」 ですね。これは病原菌が生育できないように塩素消毒をしているためです。

明治時代の初めに西洋文明と一緒に感染症も持ち込まれました。コレラや赤痢などの流行が起こり、10万人規模の死者が出ることが何度もあり

ました。そして飲み水が菌に汚染されていることでコレラや赤痢が発生することが分かり、上水道を普及させたところ流行はなくなりました。

ところで、海外では現地の水道水をそのまま飲んだらダメ、と言われたことはありませんか?これは浄水レベルが低い国があるためです。実際、わたしは過去に、海外出張中に少し生水を飲んだ ことでA型肝炎に感染した患者さんを診たことがあります。

また、あまり知られていませんが、1998年に長崎県内のある大学とその付属高校の学生・生徒が800人以上、赤痢に罹ったことがありました。集団赤病の発生です。調査の結果、その原因が簡易水道の水である井戸水が菌に汚染されていたためと分かりました。

水道水に利用する水源の水が悪ければ、それだけ浄水場での処理に塩素などいろいろなものを大量に使う必要があります。その結果、水が安全になってもおいしくなくなり、たくさん飲むことはできなくなります。

国土交通省・淀川河川事務所のホームページ には、ちょっとビックリするようなことが出ています。近畿地方の“水がめ”といわれる琵琶湖の水は、桂川、木津川と合流し淀川に流れ込んでいま す。この淀川下流の大阪地域で給水される水道水には、何と上流の5カ所の下水処理場で処理した水が再利用されているのです。しかもこの地域の利用者は、全”水がめ”利用者の半数を超えるとい います。もちろん飲用水ですからちゃんと浄水処理 しているのですが、こんな現実もあることを知って おいてよいと思います。

■深刻な医薬品による河川の汚染

いま世界的に河川が医薬品で汚染されていることが問題になっています。

イギリスの世界的な学術雑誌「ネイチャー」が 2003年に、こんな吹き出し(セリフ)を付けて、 薬局で悪者が説明を受けている風刺画を掲載しました。”1日3回、この薬を飲んでください、単にその辺の川の水を飲むだけでもいいですよ”と。そのココロは?“川の水に薬の成分がたくさん含まれているから、効果が十分ありますよ”という風刺です。

2019年にイギリスの研究者が発表したデータでは、世界の91河川の3分の2近くで抗生物質が検出されたとしています(ここに日本の河川は含まれていません)。河川の水が抗生物質で汚染されると、そこで生きてきた細菌は滅亡の危機を乗り越えようと、その抗生物質よりも強くなります。それが耐性菌というものです。

抗生物質は体内で分解されないため、尿や便から体外に排出されます。それが河川に流れ込んでいるとみられています。

日本でも同様です。2004年から06年にかけて 関西や関東で厚生労働省と国立保健医療科学院がいくつかの浄水場を調べたところ、飲用水に薬品が残留していたことがわかりました。ただし濃度が非常に低いため、すぐに対応する必要はないとの見解でした。

しかし、2018年の環境省の発表では、淀川水系で調べたところ、医薬品の汚染度が魚の異常行動につながるレベルに達していたとのことです。 吐き気を止める薬、抗アレルギー薬、血圧降下剤 など市販薬の半数以上は、直接、間接に神経細胞に作用します。これらが下水処理後の水に混じって生態系に悪影響を与える可能性が指摘されて

ちょっとした風邪で病院にかかっても、 薬や吐き気止めが処方されます。その薬が水の汚染にがっていることに、医師も患者さんも気づいていません。加えて、わたしたち人間だけでなく、 家畜にもさまざまな薬が投与されていることを忘れてはいけないでしょう。

■厚労省が「水を飲もう」運動を推進

浄水場を出てからわたしたちの家の蛇口にたどり着くまでに、水は水道管を通ってきます。実はこの水道管、以前は鉛管が使用されていました。まだ古い鉛製の水道管は残っていて、鉛が溶け出したり錆びたりすることがあります。

この件について東京都水道局は定期的な水質検査をおこない、厚労省が定めている水質基準に適合している、としています。ただし、長時間、水道水を滞留させた場合、水質基準を超える鉛が溶け出すことがあるため、「バケツ一杯」程度の最初の水は飲用以外に使ってほしいとしています。

同じ厚労省では「健康のため水を飲もう」推進運動を2007年からおこなっています。以下がそのスローガンです。

「目覚めの一杯、寝る前の一杯。しっかり水分、元気な毎日!体の中の水分が不足すると、熱中症、心筋梗塞など、さまざまな健康者のリスク要因となります。健康のため、こまめに水を飲みましょう」

たしかに健康のためには水が必要です。では、 わたしたちはどのような水を飲んでいったらいい のでしょうか。次回からこの点を考えていきます。

Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ Vol.4

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

適宜適切な水分補給でストップ! 認知症

“水のホメオスタシス”を正常に 働かせるためのキーポイント

わたしたちは脱水になった時、体内の水分バランスをどのように調整するのでしょうか。脱水状態になると血液が濃縮し、それを薄めようと口中が渇きを覚え、飲水によって脱水状態から抜け出ようとします。

もう少し医学的に説明すると、内分泌や自律機能を司る脳の視床下部が脱水を感知し、パゾプレシンというホルモンを分泌して腎臓からの水の排出を減少させ、脱水を抑えようとするのです。

この身体の自律的な調整機能のことを、水のホメオスタシスと言います。しかし、水のホメオスタシスがうまく働かず脱水が続くと、脳の神経細胞の機能に障害が出たり、脳萎縮や慢性的な脳血管になったりして、高齢者に多い認知症やパーキンソン病が早期に発現する原因となり得ることが分かっています。

このホメオスタシスがうまく働かない原因として は、加齢による腎臓の機能の低下や、筋肉量の減少及び脂肪の増加、バゾプレシンの分泌の変化があげられます。

つまり加齢とともに水のホメオスタシスが脱水側にシフトしてしまうということです。このため知らないうちに慢性脱水になってしまう危険性が高くなります。

■高齢者が脱水しやすい理由

2020年10月、名古屋大学が老人介護施設の入所者の慢性脱水について調べた結果を発表しました。それによると、入所者の慢性脱水のリスクは高いとのことです。

老人介護施設には認知症の患者さんや自分で水分摂取をできない人所者が多く、先に述べたホ メオスタシスが脱水側に傾いています。そのために喉の渇きのセンサーが鈍ってしまっていることが、 脱水の要因の一つになります。

このように高齢者は水のホメオスタシスが脱水側にシフトしているため、慢性脱水になりやすくな ります。それが続くと脳細胞に影響が出て認知症が発症します。認知症になると水を飲むことを忘 れたり、いつ飲んだのかを覚えてなかったり、さらには水を飲むことが困難になったりします。するとさらに慢性脱水が進みます。悪循環に陥るというわけです。

■認知症と脱水の相互作用

2018年のイタリアでの報告ですが、アルツハイマー型認知症の患者は脱水になっていることが多く、また逆に脱水がある場合、認知症が発症するリスクがあるということでした。さらに65歳から75 成で認知症の患者は、76歳から85歳の認知症のない高齢者よりも高い脱水状態になっていました。

の約75%が水分で構成されています。そしてその水はアストロサイトという神経細胞に貯蔵さ れています。脱水になるとこのアストロサイトにいつもより水を溜め込むように水のチャンネルが開きます。

これに関連して、16時間、水分摂取をしないままでいると、脳の容積が平均0.55%減少し、水分を補給すると平均0.72%増加した、という報告があります。その差はわずか0.17%で、要するに水を溜め込んでいたために非常に少ない変化でした。 アルツハイマー型認知症では、アミロイドベータというタンパク質の塊が脳の中に蓄積すると言われています。アミロイドベータは元々を守るためのものですが、溜まってしまうと認知症などの病気の原因になります。

このアミロイドベータを蓄積させないためには、 アストロサイトに貯蔵された水が適切に循環することが極めて大切です。この循環を促すのは、適切に摂取する水分、そして良質な睡眠です。 では、慢性脱水状態になっているかどうかの判断は、どう下したら良いのでしょう。実は、肌がカサカサしている、舌が乾いているという兆候は慢性脱水の指標にはなり得ません。また、血液検査で一般的に使われている指標も使えません。これらは全て急性脱水の時の指標なのです。

困ったことに慢性脱水になると高齢者に多い貧血も、採血データでは正常あるいは少し貧血気味ぐらいに判断されてしまいます。ともかく、意識して水(もちろん還元水!)を飲むことが、とても大切になります。

ただし高齢者の場合、知らないうちに腎臓機能が悪くなっている人が多いので、体調の変化にも気をつけ、少しずつ適当な量に分けて飲むようにしましょう。

■脱水と肥満の深い関係

それにしても、女性で慢性脱水の人に肥満頼向が多いのはなぜでしょう。人は脱水時に腎臓の機能を制限し、出ていく水を少なくします。その状態が続くと、それが定常になって水を正常より溜め込もうとし、体重の増加に結びついてしまいます。

女性の場合、もともと男性に比べて脂肪が多く、水の貯蔵庫である筋肉が少ないため、肥満傾向になると、男性よりも相対的に身体の水分が少なくなるため慢性脱水になりやすいのです。

ところで「わたしは水を飲んでも太るんです」っていう話を聞いたことはありませんか?これは慢性脱水になっているのであれば、あり得る話です。通常、尿として排出されるはずの水を、(慢性脱水の緊急事態として留め込もうとするのですから、その結果として体重が増えるのです。

女性なら気になる足首の太さは、肥満ではなくて水で浮腫んでいるのかもしれませんよ。

ここまで読んだら気づかれたと思いますが、慢性脱水を防ぐために必要なことは、水を飲むだけでなく、水の貯蔵庫である筋肉もしっかりと維持することです。それがすなわち認知症の予防にもつながります。

Dr.マリが綴る『水と健康』AtoZ Vol.3

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

脳と筋肉の75%が水!

脱水が招く怖い症状

こむら返りも肩こりも水不足が原因、放置すると認知症の怖れも

前回は、慢性的脱水で起こるいろいろな症状についてお話をしました。では水を飲んで脱水状態を改善すると、その症状は良くなるのでしょうか。 答えは半分正解、半分不正解です。

足りないものを補うと元に戻るという意味では正解。これは、水が足りなくて萎れている植物に水をやると生き生きしてくるのと同じです。でも長い間水やりをしないと、いくら水やりをしても元に戻らなくなりますね。

わたしたちの身体も同じです。水分が足りず萎れると、さまざまな症状を感じます。たとえば関節が萎れると硬くなって動きにくくなったり、さらに進むと痛みとして感じたりします。そこで水分を十 分に摂ると、身体が元に戻る――すなわち若返りにつながりますね。

しかし長い間萎れていると、関節の間が狭くなり骨も痛んでしまいます。そうなったら水を飲んでも元に戻ることはできなくなります。

肌(スキン)の場合はどうでしょうか。お風呂に入っている時は本当に瑞々しいのですが、お風呂から上がって水気をとったら突っ張り、カサカサとしてきますよね。

水を十分に飲むとカサカサは治りますが、残念ながら赤ちゃんの肌には戻りません。肌の約80% は水ですから、水分の多寡による違いがあらわれやすいのです。

それでは筋肉が萎れるとどうなるでしょうか。も ともと筋肉の水分は75%もありますが、不足すると筋肉が細くなって身体を支えるのが難しくなります。背中が曲がって歩幅が狭くなり、足も引きずりがちになります。いわゆるサルコペニア(「水のコラム」参照)の状態になります。

夜中に痛みで飛び起きる、あの腓返りの原因の一つも脱水です。また、筋肉が固くなってしまった 状態が肩こりであり、頭痛の原因にもなります。固くなる原因は血の巡りが悪くなることで、その原因の一つが脱水です。したがって、デスクワークなどで肩が凝って頭が痛くなる前に、こまめに水(もちろん還元水!)を飲んでストレッチをすると良いでしょう。

■脳の省エネモードは危険!

身体の水不足というのは、スマホの省エネモードと同じようなものです。このモードに設定すると、 メールを受け取るのもダウンロードするのも時間がかかりますね。人間にたとえると、物事を理解して処理する速度が遅くなるということです。 若い頃は瞬時に覚えることは得意だけれども、加齢とともに苦手になるといわれています。しかしその年齢分、たくさんの情報が脳に刻み込まれています。それをちゃんと取り出して使うためには、脳細胞がしっかり働く必要があります。

一方、手足と同じで脳も使わないと衰えてきます。毎日、同じ道、同じ路線、同じ駅を通って通勤しているだけでは、脳は省エネモードで働いてしま います。

省エネモードを解除しようとしても、エネルギーが足りなければできません。その大切な要素が水です。何しろ、筋肉と同様に、脳の75%は水なのですから。

■水不足は脳梗塞の一因にも

脳梗塞というのは、脳の血管が詰まって脳の機能の一部が働かなくなる病気です。半身が麻痺して動かなくなる、痺れる、呂律が回りにくくなる、言葉がうまく出てこない、などいろいろな症状が出ます。

すぐに病院で治療をし、その後にリハビリをしても症状が残る人がたくさんいる病気です。場合に よっては小さな血管が詰まっても、症状が出ないことさえあります。

物忘れがひどいからと病院で検査を受けたら、 「脳梗塞の跡がたくさんありますよ。それが原因で 認知症を発症したのです」といわれることもあります。その脳梗塞の原因の一つが脱水です。

脳梗塞がなくても、アルツハイマー型などの認知症になることがあります。その原因の一つがやはり脱水なのです。やっかいなことに、認知症になると水を飲まないといけないことも忘れてしまうかもしれませんから、悪循環になりかねません。

脳の75%を占める水がいかに大事か、分かっていただけたでしょうか。

コラム/水のアラカルト

サルコペニアとは?

さて皆さん、ふくらはぎの一番太い部分を測ってみてください。男性で34cm未満、女性で33cm未満だったら、あなたはサルコペニアの可能性があります。

サルコペニアとは、加齢や病気で筋肉量が減少して全身の筋力低下が起こることを指しています。

ギリシャ語で筋肉のことをサルコ、喪失のことをペニアと言います。この二つの言葉を合わせて作られたのがサルコペニアです。

作られる筋肉よりも減少する筋肉が多くなることが原因です。筋肉の中に脂肪が含まれて、いわゆる“霜降り”になっていると、サルコペニアになりやすい、ということが最近わかってきました。

原因は加齢、活動量の低下、病気、栄養不足です。超高齢社会を迎え、サルコペニア非常に注目される言葉になりました。健康寿命を少しでも延ばすためには、サルコペニアを予防することが必要になります。

略歴

医学博士 上古眞理(じょうこ まり)
(株)Peak Health Energy代表取締役
1990年滋賀医科大学卒業
同大内科医局の研修を経て93年同大医学部大学院に進み96年医学博士号取得
98年4月より2017年12月まで京都岡本記念病院に勤務
18年1月より19年12月まで彦根市立病院勤務
専門は神経内科
滋賀県在住

Dr.マリが綴る『水と健康』AtoZ Vol.2

エナジック・インターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

あなたは「慢性的な脱水状態」にあるのかも⁉

子どもの頃はよく喉が渇いたのに、加齢と共に喉の渇きが減ったと感じていませんか?

生まれたばかりの赤ちゃんの身体の水分量は体重の80%もあります。しかし年齢とともにそれが減っていきます。子どもの頃は70%ですが成人すると60%に、高齢になると50%に下がります。

身体が水分を必要としなくなるのではなくて、喉の渇きを感じなくなるので、水分を摂る量が減ってくるためです。

では水分必要量は加齢と共に減るのでしょうか? そんなことはありません。多くの人は、むしろ水分摂取量が足りていないのです。それどころか、多くの人が、実は慢性的に脱水状態にあります。

便秘、高血圧、体重増、胸焼け、疲労感から、頭痛がする、怒りっぽくなった、肌に艶がなくなった ――まで。これらは年齢のせいではなくて、単に脱水によって起きている場合があります。

「ちゃんと水分を摂っています」という方でも、よく聞くと、お茶やコーヒーなどカフェインが含まれている飲み物をたくさん飲んでいることがあります。でもカフェインには利尿作用がありますから、水分を摂っていても脱水は改善しないことになりかねません。

身体というのはうまくできていて、いろいろな状況に適応します。水分が足りないならまず尿量を減らします。そして脳や心臓など生きていくのに必要な器官に優先的に水分を供給し、髪の毛や肌など命に関係のないところへの供給を減らします。

尿が極端に減ったり肌が異様にカサカサに なったりすれば誰でも気づきますが、少々の変化は気にも留めないものです。

■なぜ女性に便秘が多いのか?

女性の約半数が便秘と言われています。実は女性は男性よりも身体の水分量が少なく、かつ喉の渇きに対して鈍感にできています。特に夏場はあまり汗をかきたくないため、水分摂取を控えたりするのも女性に多い話です。

トイレの回数が増えるのが嫌で意識的に水分量を控え、慢性的な脱水状態になっている人も案外多いのです。高齢者の場合、トイレに行くことが大仕事になる人もいます。それだけでなく、電車や車に乗っていてトイレがなかったり、仕事中にしょっちゅう中座しにくかったり、トイレを控える理由はいろいろあると思います。

冬場はあまり汗をかかないので、さほど水分摂取に気を使っていないと思いますが、しかし空気が乾燥しているところにいることが多いので、自分で感じているよりも水分が身体から蒸発しています。ですから気付いた時にコップ一杯の水を飲むだけで体調が良くなることもあるのです。

■体重×30mlが摂取量の目安

では1日にどれくらいの水分を摂取したら良いのでしょうか。体格や活動量によって変わってきますが、一つの目安として体重×30mlと覚えておいてください。

たとえば体重50kgの人なら1500ml(1.5L)に なります。活動量が多い人や汗をたくさんかく夏場にはもっと必要になります。基本的に腎臓や心臓に問題があって水分摂取量を制限されていない場合は、たくさん飲んでも排出量が増えるだけなので問題ありません。

さらに水はわたしたちの体温を一定に保つのに非常に重要な役割をしています。暑い時には汗を 出すことで体の表面を濡らし、それが蒸発する時に皮膚の温度を下げます。息が早くなるのも肺から水蒸気を出すことで熱を放出しているのです。

犬は暑い時期にハーハーと息が荒くなりますよね。犬は人間のように全身から汗をかけないためです。水は温まりにくく冷めにくい性質があるので、体温を一定に保ちやすくなります。

水分量は筋肉が75%で、脂肪は10%です。年齢と共に体温調節が難しくなって寒がりになる一つの原因は、筋肉量の低下による水分の減少も関係しているのです。

コラム/水のアラカルト

登山と脱水症状

わたしは以前、泊まりがけで北アルプスなど高い山に出かけていました。10kgぐらいのザックを背負って、1日8時間も歩いたりするわけですから、汗のかき方も半端ない量になります。

考えてみたら普通の生活でも少なくとも1.5Lの水が必要なのに、登山中も同じ量かそれより少ない量しか飲んでいませんでした。理由の一つはトイレの問題、もう一つは持っている水が足りなくなったら大変だから、飲む量を制限してしまうことです。

無事に下山後、ほっとした途端に喉の渇きを覚えるのですが、水分を摂っても尿はあまり出ず、すごい勢いで手足が浮腫んでくるのです。数日はスカートもパンプスも絶対に無理な脚になってしまいます。実は登山中に脱水状態になり、身体を守るために腎臓が機能を制限して尿の排出量を減らしていたからです。

そんな大変な思いをしてまでなぜ登山をしていたか、ですって?そこまで行かないと見られない花々や景色が、素敵すぎたからでしょうか。

略歴

医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

(株)Peak Health Energy代表取締役
1990年滋賀医科大学卒業
同大内科医局の研修を経て93年同大医学部大学院に進み96年医学博士号取得
98年4月より2017年12月まで京都岡本記念病院に勤務
18年1月より19年12月まで彦根市立病院勤務
専門は神経内科
滋賀県在住

Dr.マリが綴る『水と健康』AtoZ Vol.1

エナジック・インターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

エナジックインターナショナル顧問の上古真理医学博士が「水と健康」をめぐる連載を開始します。「人間の身体にとって水とは何か」から始まり、電解水の特長や意義、その使用実態などを、科学的・医学的見地から平易に解説していきます。

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

琵琶湖を通じて学んだ「水」の意義

わたしは京都府の南部、長岡京市で生まれ、大学を卒業するまで、そこで生活をしました。2014年9月から放映されたNHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」で有名になった、山崎のウィスキー 蒸留所のすぐ近くの町です。日本初のウィスキー蒸留所ができるくらいですから、当然、良い水に恵まれていました。

実際、当たり前のように美味しい水を飲んでいたので、京都市や大阪市に遊びに行くと、消毒薬の臭いがする水がまずくて飲めなかったのを覚えています。

大学は滋賀県大津市の国立滋賀医科大学医学科に進学しました。滋賀県は全国的にみると存在感の薄い県ですが、「日本一広い琵琶湖がある」といえば、印象は変わるのではありませんか。 この琵琶湖が身近になったことで、わたしは「水」 に関心を持ち、いまに至っているのではと思うことがあります。

琵琶湖は、関西圏およそ1,450万人が利用する水道水の水源になっています。1977年にこの琵琶湖で淡水赤潮が発生し、住民運動が起こりました。その結果、79年には、工場の排水規制と、リンを含む家庭用合成洗剤の販売・使用を禁止する 県条例が制定されました。下水道の整備も非常に早く進みました。

87年に「抱きしめてBIWAKO」という、水と命をテーマにしたイベントが始まりました。琵琶湖1周 235kmを、手を繋いだ多くの人の輪で囲んだのですが、実はわたしも参加していました。

■苦心した病気と水分摂取量

大学を卒業した後は、現在までほとんど滋賀県に住んでいます。その間、水道水の水質の良し悪しに直結するので、いつも琵琶湖の水位を気にしていました。そうはいっても、周辺の山々の雪解け水 と梅雨時の雨の量次第で、水位は決まってしまうのですが――

わたしは滋賀医科大を卒業すると、初期研修を終えて、93年に同大・大学院医学系研究科に進み ました。そのころ、わたしの地元・長岡京市の友人が遊びに来て、大学のある大津市内で食事をしたのですが、「なぜレストランの水はまずいの」と聞 かれました。

彼女はずっと地元に暮らし仕事もしているので、美味しい水しか飲んでいないのです。わたしは そのころ“ただの水”を飲むことはほとんどなく、水 分はもっぱらお茶かコーヒーで摂取していました。彼女の言葉に我に返ったわたしは、いろいろ調べて水道に据え置き型の浄水器をつけました。 ウソのようにご飯とお茶がとっても美味しくなったのを覚えています。

わたしは滋賀医大の内科の医局で初期研修を受けました。その折り、入院中の患者さんの多くが複数の病気を抱えているため、1日に摂取する水分量、タンパク質量、カロリー量などをうまく組み合わせるよう常に考えていました。中でも、心臓や腎臓が悪い患者さんにとっては、水分の摂取量が特に重要ですから、1日当たりに食事とそれ以外で摂る水分量を慎重に調整していました。

加えて人工透析中の患者さんは腎臓の機能が無くなっているため、ほとんど尿が出ません。そのため概ね1回4時間で週に3回かけ、血液中の毒素と水を透析装置を通して濾過します。そのさい 体内の水分を抜くので、体重が透析前より数キログラムも増えていると、(4時間でその分を減量するのと同じですから)ものすごく身体に負担がかかります。体重(水分)が増え過ぎると、肺に水が溜まることもあるので、摂取水分量の調節は大切なことなのです。

■登山で知った水の大切さ

こんなふうにわたしの医師活動は、「水分を制限しましょう」ということから始まったようなものです。ところが、市中病院に勤めるようになってから は逆に、「水を飲みましょう」という話をすることの 方が増えました。なぜなら、トイレに行くのがめんどうでたいへんなめ、水を飲む量を控える年配の方がとても多いからでした。

わたし自身はといえば、朝9時から外来診察が始まって、昼食も食べずに終わるのが午後4時、なんていうことはざらにあり、テンションを維持するために摂る水分はコーヒーになっていました。

やがて500mlのペットボトルの水1本を持って外来診察をするようになりました。しかし忙しくてそれさえ飲み切ることはほとんどありませんでした。なのに患者さんには「しっかり水分を」というわけですから、ずいぶん矛盾していました。

水が大事なことについて身をもって体験するようになったのは、登山を始めてからです。当直明けに体力がなくなったなあ、と感じ始めた40歳から、いきなり本格的登山を始めました。何と最初の年から北アルプスに登っていたのですから、あきれる人もいるのではありませんか。

ところで登山では、水を飲むのを我慢したら倒れてしまいます。でも、一気にたくさん飲むと余計にしんどいから少しずつ飲みなさいといわれました。ある時、面白いことに気づきました。持ってきた 水はあまり飲めないのに、山の湧き水はごくごく飲めるのです。それも山の上の方の水より少し降りて からの水、つまり地中から湧き出てきた水の方が美味しく飲めました。

その後、エナジックの販売店さんから電解水を紹介されました。しかし興味はわかず放置していましたが、数カ月経ったころに自分で調べてみて、 やっと山での体験が何だったのかが理解できました。良い湧水はアルカリ性だったのです。

だったら、しんどい思いをして山に行かなくて も、電解水生成器を通して毎日同じような良い水 をいつでも飲める――これはなんて素敵なことだろうと思うようになりました。これが、わたしの「電解水との出合い」でした。

略歴
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)
(株)Peak Health Energy代表取締役。
1990年滋賀医科大学卒業
同大内科医局の研修を経て93年同大医学部大学院に進み96年医学博士号取得
98年4月より2017年12月まで京都岡本記念病院に勤務
18年1月より19年12月まで彦根市立病院勤務
専門は神経内科
滋賀県在住