第18回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

脱水症状を克服するのに還元水飲用は有効か!?

男女100人が運動後に試みた

還元水と精製水の飲用比較

運動不足だからまずはウォーキングを始め ようと意気込んでみたけれども、日に焼けるのは嫌だし、長袖を着たら暑いし、汗をたくさんかいたら日焼け止めは流れてしまうし、といろいろな理由をつけてエアコンの効いた部屋から出られなくなる季節になってきました。

ところで「暑熱順化」という言葉があります。これは体温調整によって体が暑さに慣れることです。何の変哲もない言葉のようですが、体温の調節がうまくできなくなると、体の中に熱がたまって体温が上昇し、熱中症が引き起こされますから、暑熱順化の大切さは理解していただけると思います。

わたしたちは暑いところにいたり、運動をして体温が上がったりすると、発汗や皮膚の血管の拡張、または心拍数を上げるなどして体温調節をします。とくに汗は蒸発する時に気化熱で皮膚の温度を下げてくれる有益な役割があります。体温調整がうまくいかないと熱中症になりやすくなります。

初夏に暑いと思っていた気温が、夏本番になると涼しいと感じたことがあるのではないでしょうか? それはあなたが暑熱順化したからです。

暑く湿気た環境で還元水を飲むと・・・

 毎日、仕事柄、エアコンの効いた環境で過ごすという人も少なからずいるでしょう。ずっとエアコンの効いた部屋で生活すると、この暑熱順化ができません。

子どもは大人より外で走り回るから大丈夫だったのですが、最近は小中学校にもエアコンが完備されていますから、外で遊ばなければ子どもでも暑熱順化が不十分になる可能性があります。

暑熱順化するにあたって汗をかくので水をうまく摂りたいですね。そこで、湿度が高く暑い環境下で運動後に還元水を摂取すると、どういう結果が得られるのか、についての研究があったので紹介します。

2016年11月28日発行の国際スポーツ栄養学会誌に掲載された英語論文です。タイトルは「アルカリ性電解水の健康成人における血液粘度への影響」。

著者(所属)は、ジョセフ・ワイドマン(トーマス・ジェファーソン大学/米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)、ラフル・E・ホールスワース・Jr(南東コ ロラド病院/米国コロラド州スプリングフィールド)、グレゴリー・フリードマン(A.J.ドレクセル・プラズマ研究所/米国ニュージャージー州カムデン市)ほか3人(3団体)。

BMI29以下の男女50人ずつに試験

いうまでもなく、スポーツに限らず体を使う職種において適切に水分補給をおこなうことが大切です。運動中の発汗による体重の2%以上の減少は、生理的なパフォーマンスの低下と関連することが立証されています。

今回の研究では、運動で誘発した脱水後の回復のために、精製水とアルカリイオン水(還元水)をそれぞれ飲用した場合の血圧、心拍数等の各種測定や血液検査による生体マーカーの比較をおこないました。 25歳から49歳の成人ボランテイア100名(男性50名、女性50名)を対象として、還元水 と精製水のどちらを飲用しているのかを知らせない「無作為二重盲検」で実施しています。

対象者は(体重kg)÷(身長m)で計算される体格指数のBMIが29以下で非喫煙者、そして試験参加前に1週間以上投薬を受けていない人。また、24時間前から激しい運動やアルコール摂取を控え、カフェインの過剰摂取がないように指示しています。そして女性は妊娠・授乳・月経中ではなく、過去3カ月間に経口避妊薬を服用していないことを確認しています。

ちなみに日本肥満学会の基準では、BMIが 18.5~25未満は正常、25以上30未満が肥満1度とされます(基準は40以上の4度まである)。この日本の基準に当てはめると、アメリカ人は70%が肥満です。

試験開始時に各種測定、採血をおこない、その後は食事と水分摂取を控えるように指導しました。

そして、被験者はトレッドミル、固定式自転車、エリプティカルトレーナーのいずれかを使って、体重が2.0±0.2%減るまで有酸素運動をおこないました。部屋の温度は30°C、相対湿度70%の温熱環境としました。

運動終了後は21°Cで相対湿度60%の環境に移動して20分休息後に各種測定、採血をおこないました。

その後30分の間にボトル入りの精製水あるいはミネラルを添加した還元水を飲むよう指示しましたが、その量については最初の体重1kgあたり20mℓに設定し正確に測って渡しました(たとえば体重60kgの場合は1200mℓ)。90分間の回復期の間にも血液粘度と血漿浸透圧を6回測定しました。

試験時間は被験者によって異なり、4~8時間かかっています。精製水を飲んだ群と還元水を飲んだ群は、平均年齢、人種に差はなく、血圧、心拍数、呼吸数、体温などにも差はありませんでした。

還元水は血液粘度の回復に優位性

ではその結果です。血液粘度は運動により両群で同じように増加しましたが、還元水を飲んだ群は60分で運動前のレベルに戻りましたが、精製水を飲んだ群は120分後も元に戻りませんでした。血漿浸透圧、生体電気インピーダンス(体脂肪計に使用されている体内水分を測る方法)は両群に有意な差はありませんでした。

この試験では統計学的に還元水を飲んだ群の方が急性脱水後の血液粘度の回復が早いという結果になっています。要は早く血液サラサラになるということですね。

このメカニズムについて、今回の研究グループは酸化ストレスの軽減と関連している可能性が考えられると推察しています。

スポーツで体を動かしたり、激しい肉体労働をしたりするさい、ウォーキングの時のようにいつも水を飲める環境にはないことがあります。今回のデータは、急性脱水的なケースにおける適正な水分補給のあり方を示したといえるのではないでしょうか。

この研究結果を参考に、還元水による水分補給に気を配り、早く暑熱順化して、少しでも夏の暑さを楽に過ごしたいものです。

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