第13回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

還元水は肝臓機能障害を抑制するってホント?

「酒に強い」「酒に弱い」とはいったい何を意味しているのか

年末年始は、普段アルコールをあまり摂取 しない人でも、飲む機会が多くなるのではないでしょうか。

アルコールは肝臓でアルコール脱水素酵素(ALDHI)によってアセトアルデヒドという物質に分解されます。次にアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)によって水と酢酸(お酢)に分解されます。日本人の4割はこの酵素の働きが弱く、4%は分解することができません。実は本人を含むモンゴロイド全体に同じ傾向があるのですが、アフリカ系やヨーロッパ系の人はALDH2の働きが弱かったり欠損していたり する人はゼロです。

お酒を飲むとすぐに真っ赤になったり頭痛や吐き気がしたりするのは、アセトアルデヒドが原因です。アセトアルデヒドはタンパク質やDNAと反応したり、活性酸素種を生成したりして肝細胞を傷つけ、脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝癌などのアルコール性肝機能障害の原因になるこがわかっています。

■「酒豪」は脳の“感受性”の低下ゆえ?

お酒を飲み続けていると、以前よりも強くなった、どうしてなのだろうと思う方がいるでしょう。

肝臓のシトクロムという酵素の働きでアルコールの分解速度が上がって「強く」なることがあります。しかしそれより、飲み続けることで脳のアルコールに対する感受性が低下し、アルコールの血中濃度が以前より上がらないと酔わなくなったため、お酒が強くなったと感じてしまうのです。

逆に、昔はお酒が強かったけれど最近は弱くなったなあという人もいると思います。

これは、もともとあまり強くなかった人が飲み続けて脳の感受性が低下していたのに、飲む機会が減ったことで元に戻っているのかもしれません。

あるいは、加齢で肝臓の機能が落ちてきたことが原因かもしれません。それだけでなく肝臓に負担がかかっている状態、たとえばいろいろな薬を服用していたり、ストレスを溜めていたりすることで、肝臓が悲鳴を上げているからかもしれません。

焼酎やウイスキー、ブランデーなどアルコール度数の高いお酒を飲む合間に、水やアルコール度数の低いビールを飲むことがあります。これは悪酔いを防止する意味と脱水を防止する意味があるとされています。

アルコールは利尿作用がありますから、飲んだ量以上が尿になって出ていきます。それだけでなく、アルコールを分解する酵素が働くためには水分が必要なのでそこにも使われます。ですから水を飲まないと、どんどん脱水状態になってしまいます。

アルコール度数の高いお酒を飲んだ翌朝に、ものすごい喉の渇きを感じたりするのは、脱水状態になっているからです。

こうならないためにはアルコールを控えめにすることが一番なのですが、飲んでしまったら、しっかり還元水を飲むことがお勧めです。

この還元水が肝機能障害の抑制につながる可能性については、マウスを使った実験結果を9月号で紹介しました。ただし、そのメカニズムははっきりしていませんでした。

■ヒトの肝細胞株を使った実験結果

このメカニズムの解明について、早稲田大学・人間科学学術院の原太一教授らによる最新の研究 報告があったので紹介します(論文掲載誌は 『Antioxidants』2021年5月。アルカリイオン整水器協議会と早稲田大学のホームページでも紹介されています)。

この研究は肝細胞株を用いておこなわれました。肝細胞株がアルコールの中でどのような影響を受 けるのかを調べたのですが、アルコール濃度が高くなると、肝細胞株の24時間生存率が低くなりました。

具体的には、濃度4%で生存率は半分になり、8%になるとほぼゼロになりました。高濃度のアルコールの中で肝細胞株は生きられないのです。

これは浄水を使った実験でしたが、では還元水を使うとどうなるのか――(高~低)4段階の水素濃度の還元水に、それぞれ4%の比率のアルコールを混入させた(濃度4%の)培養液で肝細胞株を培養したところ、一番高いレベル4濃度12601350ppb(ppbは10億分の1単位)の還元水では、肝細胞株の生存率が浄水よりも優位に高くなりました。

また、アルコール度数を4%だけでなく、0、1、 2、8%でも実験培養したところ、肝細胞株の生存率は、アルコール度ゼロなら100%で、1%では還元水の方が浄水より生存率は上回り、2%は4% と同様の優位に高い生存率を示しました。しかし、8%になると、還元水でも浄水でも生存率はほぼ0%となりました。

さらに実験を重ねた結果、水素濃度が高い還元水はエタノールからアセトアルデヒドに分解される時に使われるALDH1の働きを抑制し、アセトアルデヒドから酢酸と水に分解するALDH2の働きを活性化することで、肝細胞株のアセトアルデヒドの量を減らすことが明らかになりました。

還元水は有毒なアセトアルデヒドの量を減らし、その結果、活性酸素種の生成を抑制して肝細胞を保護するのではないか、と論文では結論付けています。

ただし、この研究は細胞レベルのもので、実際に口から還元水を飲んだ場合に同じような結果が得られるかどうかは、これからの課題になります。

したがって、少々深酒をしても還元水さえ飲めば肝障害を防げるから安心、などと思って油断しないでください。それよりも、自分の体がアルコールにどれくらい耐性があるかを自覚して、楽しく健康を損なわないように、アルコールと付き合いたいものです。

第12回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

還元水の飲用にビフィズス菌が増加?

還元水が腸内細菌に作用してあなたのウンチは健やかに!?

今回は、還元水の摂取が便の硬さと腸内細菌に及ぼす影響について実施された、興味深い研究結果を紹介します

まずお聞きしますが、あなたが日ごろ排泄している便はどんな様子ですか。ブリストル・スケールというモノサシ(下図)を使って、確認してみてください。

便のタイプを把握しよう!

タイプ1はコロコロ便。よくウサギのうんこみたいといわれる硬さと形のものです。タイプ2はソーセージ状でも硬いので、排便時にお尻が痛くなるような便です。タイプ3はやや硬く表面にひび割れがあるソーセージ状の便。タイプ4が普通便。スルスルっと排便できて多いととぐろを巻く便です。

タイプ5はやや軟らかい便で、しわがあって半分固形になっているものです。タイプ6は泥状便で、ふにゃふにゃで不定形の便です。タイプ7は固形物を含まない、いわゆる水様便です。このうちタイプ1、2は便秘状で、タイプ6、7は下痢便とされるものです。2019年に京都府立医科大学の伊藤義人教授や高木智久准教授らによる、日本人の便の硬さの調査・研究の結果が報告されました。

それによると、健康な男性の60%がタイプ5と6のゆるい便の傾向でした。一方、女性ではタイプ1、2の硬い便の割合が多く、若い男性ではタイプ1、2はなかったと報告されています。つまり男性は下痢傾向にある人が多く、女性は便秘傾向にある人が多いということです。

次に、学術雑誌『Medical Gas Research』 (2021年10月号)に発表された“アルカリイオン水(還元水)の摂取が便の硬さと腸内細菌叢に及ぼす影響”という内容の論文を紹介します。

山梨大学の小山勝弘教授らの研究で、健康なボランティアの男性20人に参加してもらい実施しました。参加者は年齢が30-59歳で非喫煙者、かつ抗酸化物質を常用せず、還元水も常用していない人たちです。また試験中は激しい運動はしないように指示しています。

半数の10名には、2週間、1日250ml入りのアルミパウチに入った還元水を2パウチ(500ml)飲んでもらいました。残り10名には アルミパウチ入りの浄水を同量、飲んでもらいました。この実験は誰が何を飲んだか分から ないよう二重盲検法でおこなっています。

なお、還元水も浄水も同じ水道水から同じ生成器で作ったもので、還元水はpH9.5、水素濃度0.3mg/Lに調整しました。

還元水飲用2週間後の結果は?

 試験参加者の便の硬さと排便回数はアンケートにとって記録しました。さらに排便回数が0回の日はブリストル・スケール値が出せなかったり、複数回の日は複数のスケール値になったりするため、2日間ごとにスケール値を合計し、それを排便回数で割ってデータとしました。たとえば2日間でスケール値が4と5の便が各1回とすると、(4+5)÷2回でスコアは4.5となります。

なお便の採取は試験開始前日と試験終了日におこなっています。

多くの日本人の腸内細菌叢は、アクチノバクテリア門、バクテロイデス門、ファーミキューテス門と呼ばれる3種類で構成されていますが、あらかじめ調べたところ、参加者も同様でした。

さてその試験結果はーーー。還元水を2週間飲用した10名のうち9名が、アクチノバクテリア門の割 合が有意に増加しました。他方、浄水を飲んだ群では有意な変化は見られませんでした。

より細かく解析したところ、還元水を飲んだ群はアクチノバクテリア門に含まれるビフィズス菌の割合が増加していました。浄水を飲んだ群に有意な変化はありませんでした。

ブリストル・スケールを見ると、還元水を飲んだ群の試験前はタイプ3から6に分散していましたが、試験後は正常のタイプ4に収束していました。浄水を飲んだ群は人によって変化はありましたが、一定の傾向は見られませんでした。

筆者も還元水飲用後に便を調べた!

『腸内細菌学雑誌』(2004年/18巻2号)に、ビフィズス菌を錠剤で摂取させたところ、便の硬さや回 数に改善が見られた、という森下仁丹の実験結果が載っていました。

前出の京都府立医科大学の試験結果は、この実験が裏打ちしていると思われます。つまり、還元水を飲むことでビフィズス菌が増加し、それが便の硬さなどを正常にさせたと考えられるのです。

ビフィズス菌というのは乳酸菌とともに腸内細菌の善玉菌の一種です。離乳前の赤ちゃんは便の 90%以上がビフィズス菌ですが、年齢とともに減ります。60歳以上になると0%になる人もいます。しかし菌の種類は一生を通じてほとんど変わりません。

また腸内細菌は年齢だけでなく、食べ物やストレスでバランスが変わることがあります。わたしは還元 水を飲み始める前に、興味があってある検査機関で自分の便の腸内細菌について調べました。そして還元水を飲み始めてから1年以上たった昨年10月に、もう一度検査をしてみました。

すると、飲用前に0.14%だったビフィズス菌は、4.51%と大幅に増加していました。ちなみにその検査機関での健常者の平均値は1.4%ですから、それと比較してもかなり増えたといえます。

その間、わたしはビフィズス菌のサプリメントや薬を飲んでいませんし、食生活が大きく変わったわけ でもありません。したがって、わたしの場合も腸内細菌の変化の原因に還元水が大きく関与していた可能性があります。

腸内細菌を調べなくても、善玉菌の割合が多いかどうか確認する簡単な方法があります。それは日々の便の様子を観察することです。善玉菌が増えると便はあまり臭くなくなり、色も黄土色、そしてブリストル・スケールのタイプ4になります。観察は健康増進のための第一歩ですよ。

第11回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

還元水は歯の酸蝕症を防ぐ効果がある?

酸性飲食物を摂取した口腔内は還元水飲用でどう変化するのか?

わたしたちが普段食べている食べ物や飲み物の影響で歯の酸蝕症が起こることがあります。還元水がこの酸蝕症の予防に効果的だという報告があったので紹介してみましょう。

そもそも酸蝕症とは、胃酸や酸性の飲食物によって歯が溶ける症状を指します。以前は酸性ガスを吸うことで起こる職業病として知られていたのですが、最近は、虫歯、歯周期についで多く、“歯の生活習慣病”として注目されています。

酸蝕症をもたらす飲食物

ところで一般的に飲料として売っているものの大半が、エナメル質界(エナメル質を溶かし始める)のpH5.5を下回っているとされています。つまり酸性です。

たとえばコーラはpH2.2、スポーツドリンクはpH3.3、ヨーグルトドリンクはpH3.9 オレンジジュースはpH3.7です。アルコール類は銘柄によって差がありますが、日本酒が pH4.2~4.7、ワインはpH3.0~3.5、ビール はpH4~5です。

また食べ物では柑橘類やそれに関わる調味料なども酸性のものがたくさんあります。たとえばポン酢はpH3.4~3.8、味噌はpH4.9 ~5.1、醤油はpH4.7~5.1といった具合です(数値は東京医科科大学・非常勤講師の北迫勇一氏による)。

酸蝕症の原因として一番多いのが、このような酸性飲食物の摂り過ぎだと言われています。

2015年に実施された東京医科科大学による疫学調査では、酸蝕症の罹患率は26.1%でした。そこでは欧州7カ国の罹患率が29%だったと いう調査結果も紹介されています。

酸蝕症は人一倍健康に注意していても罹る場合があります。たとえば、健康のためにお酢を朝晩飲んでいて発症した、とか、ビタミンCの補給のためにグレープフルーツを毎日二つ食べていたことが原因で発症した、という例も紹介されています。

具体的にはどんな症状が出るのでしょうか。歯が溶けることで歯が透き通ってきたり、丸みを帯びてきたりします。さらに進行すると、冷たい水が沁みたり、モノを噛んだ時に痛みが出たりします。歯の詰め物やかぶせたものが取れたり、歯の表面に小さな凹みができたりすることもあります。

予防するにはどうしたら良いのでしょう。酸性のものを長い間口の中に入れておかない。食べたすぐ後に歯を磨かない。寝る前の飲食は控える。pH を調整する役割がある唾液を出すようにする、といったことが推奨されています。

東海大学の研究結果を検証

次にアメリカの学術雑誌『Nutrients』(2021年発行)に掲載された東海大学の研究論文を紹介してみます。還元水が飲食による酸性症の発症予防になるという内容です。

酸によってエナメル質からリンやカルシウムが溶け出すことを「脱灰」と言います。歯の表面のエナメル質も酸性の飲食物の影響を受けますが、唾液の持つ中和力によって徐々にpHが中性に戻ります。そこでこの研究では、エナメル質の表面のpHを持続的に測定できる機械を活用し、各種の飲料を飲んでもらってから、水道水と還元水を飲用してもらい、それぞれがpHに与える影響を調べました。

まず被験者5人の安静時のデータとして、昼食後に歯磨きをし、3時間後に歯のエナメル質の表面のpHを5分間連続測定して平均値を取ったところpH5.2~5.9でした。

この後、50mlのコーラ(pH2.2)を口に含んでから飲み込むと、pHは3.1~3.3に下がりました。 その後、6〜8分かけて徐々にpHは上がり、おおよそpH7になりました。

還元水と水道水の”還元効果比べ

その後、再度50mlのコーラを口に含んでから飲んでもらい、pHが最低になったところで還元水を 50ml飲んだところ、10~20秒後にpHはおおよそ7になり一定しました。還元水の代わりに水道水で同じ実験をすると、pHが戻るのに9~12分かかったのです。

次にスポーツドリンク(pH3.3)を使って同じ実験をおこなったところ、飲んだ時にはpH3.5~3.9に低 下したものの、還元水飲用で15~20秒後にはおおよそpH7に上昇しました。同じく水道水飲用では、 pH7に戻るのに12~15分もかかりました。

通常、酸性の飲料を飲んでエナメル質表面のpHが下がっても、唾液の作用で級やかに中性に戻ります。しかし実験では、中性に戻す時間は、水道水の飲 用では10分以上かかり、還元水の飲用なら20秒足らすぐ済むことが分かりました。

以前の研究で、還元水はだけでなく口腔内のフローラを改善する効果があることが認められていま す。そこで大学の報告では、還元水は酸 丘の防だけでなく、山門アローラが関連する疾患のリスク低減にも関与するのではないか、としています。

それだけでなく、この報告は、酸性の飲食物を取った時は十分量の還元水を用取することを勧めます、という文章で締めくくっています。

スポーツドリンクを人一倍飲用する、とされているスポーツ選手は、酸蝕症になりやすいと言われています。

その証拠にイギリスの学術雑誌「British Journal of Sports Medicine (2013. Vol17) は、2012年のロンドンオリンピックで歯科クリニックを受診した選手302人について調査をおこなったところ、45%の手が酸蝕症だったとされていま

わたしは手にスポーツドリンク、片手に還元水を持って、うまく摂取していくのがいいのではないかと思います。

第10回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

還元水は胃腸症状をどう改善するのか?

2大学が実施した「胃腸に及ぼす還元水の飲用効果」の研究を検証!

電解水生成器は、多くが家庭用医療機器として日常的に使用されています。最も多い活用法は還元水の飲用ではないでしょうか。胃腸症状の改善という、厚生労働省が認めた効果に期待してのことですね。

ではこの効果は、どのように医学的・科学的に立証されているのでしょう。これを考えるための研究が、過去にはいろいろな研究機関・大学等でおこなわれています。その中で、今回は2つの大学の興味深い研究結果を取り上げてみます。

まず最初は1999年に日本機能水学会が主催した「機能水シンポジウム」(2002年から「学術大会」と改称)で発表された、還元水の飲用による症状の改善についての床試験データです。滋賀医科大学が腹部に何らかの症状のある人たちを対象にテストをしました。

さらに、それから20年近くたった2018年には、大阪市立大学が同様の方法で実施した、健康な人に対するテストの臨床データが 「Medical Gas Research」という学術誌の2018年第8号に発表されました。

今回は、この2つの興味深い臨床データを用いて、還元水の能力に迫ってみたいと思います。

胃腸症状のある人への試験結果

滋賀医科大学の研究は、消化不良、胃腸内の異常発酵、不規則な排泄(慢性下、便秘)という腹部の症状を持った患者163名(男性34名、女性129名)を対象に、浄水を飲む群(79名)と還元水 を飲む群(84名)にわけて、二重盲検法(被験者も研究者もどちらの水を誰が飲んでいるのか分から ない方法)でおこなっています。

飲用還元水はpH9.5でカルシウム濃度は30ppmです。被験者には4週間、毎日、起床時に 200mlを、1日で合計500ml以上の飲用をしてもらいました。

そしてその試験期間4週間の前後で、血液検査、尿検査、便の検査を実施し、加えて自覚症状を 聴取しています。

その結果、全体の改善率を見ると、還元水を飲んだ群は改善例が64例(76%)で、変化がなかった群が17例(20%)でした。

一方、浄水を飲んだ群の改善例と変化ナシ例は、それぞれ50例(63%)と27例(34%)でした。

次に症状別にみると、慢性の下痢があった患者は、還元水を飲んだ群では94.1%が改善していますが、浄水では64.7%に留まっていました。また腹部愁訴(胃もたれ、膨満感、胸焼け、ゲップなどの自覚はあるものの検査では異常が出ないもの)に対しては、還元水では85.7%が改善し、浄水では47.1%でした。

なお、いずれの被験者にも重篤な副作用や検査値の異常はなく、還元水飲用の安全性が確認されています。

こうした研究結果がなぜ出てくるのかということについては、多くの機関や研究者によって検討されてきています。たとえば還元水の溶存水素や腸内細菌レベル等の影響はどうか、といった ことなどです。これらについては、この欄で追って取り上げることにしましょう。

健康な人への還元水の影響は?

次に取り上げるのは、2018年に滋賀医科大学と同様の方法により、大阪市立大学で実施され た、 症状のない健常な人の臨床研究です。20 歳から60歳の普段、症状のない健康な60人を対象としています。

また、水質を同じにするため、普段使っている水道水の水源が同じ、もしくは近隣になるように被験者を選定しました。

試験は、30人ずつ無作為に、還元水を飲むグループと浄水を飲むグループに分けて二重盲検法でおこないました。4週間、毎日、起床時に200mlの水を飲んでもらい、それ以外に1日最低 300mlの水を飲んでもらいました。そして試験期間4週間の前後に血液検査、体力測定、アンケー ト調査を実施したのです。

なお、浄水のpHは7.6±0.2で、還元水はpH9.2±0.2でした。水素濃度は、浄水が0mg/ℓで還元水は0.2mg/ℓでした。

さてその結果です。血液検査では還元水を飲んだグループのHDLコレステロールが、有意差はないものの少し高くなっていました。ちなみにHDL コレステロールの数値の検討はこれまで実施されていないようです。

付記すると、HDL(善玉)コレステロールはLDL (悪玉)コレステロールとは逆に、動脈硬化を抑制

する働きがあります。したがって、この数値の判定には意義があると思います。

尿の回数は両群とも飲用前より増えています。便の状態については、還元水を飲んだ群では柔らかめの便が普通便になったり、逆に硬めの便が普通便になったりと改善した人がありました。また、還元水を飲むとぐっすり眠れる、目覚めが良いと答えた人の割合が増えました。

一方、浄水の場合は睡眠への影響は見られませんでした。還元水で便の状態が良くなりぐっすり眠れるというのは、全体的に健康的になると考えて良いのではないでしょうか。

日々の飲用量や体調のチェックを

この研究は、もともとほとんど自覚症状のない人を対象にした4週間という短期間で、かつ水分摂取量も1日500mlと、少なく設定されていました。にも関わらずこのような結果が出ています。

尿の回数に関しても、おそらくほとんどの被験者が普段よりも増えたと考えられます。

最低500mlの飲用というアバウトなものではなく、 具体的にどれくらい飲んだのか、細かいデータと1日の尿量データがあれば、もっと興味深いテストになったと思いました。 毎日の健康管理を兼ねて、飲んだ還元水の量や睡眠、便の状態などを、日々の体調を含め記録してみると、何か新しい発見があるかもしれません。もし そういうデータが集まれば、わたしは医師としてKangen Waterと健康との関連性を検討・分析してみたいと思います。いかがでしょうか?

第9回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

マウスと被験者50人で試した還元水の有効性

肝機能障害と疲労回復に還元水は果たして効くのか?

今回から、いよいよ電解水に関する各種の研究結果を紹介することになります。まずは還元水に関する特徴的な研究を連載し、次いで酸性電解水に移る、といった順番で進めて いく予定です。電解水の安全性も重要な研究 課題ですから、追って取り上げることになります。ともあれ研究テーマは順不同で掲載して いきますので、毎回、バラエティに富んだ、ユニークで興味深い研究結果をお伝えする場となります。どうぞお楽しみに。

マウスを使った実験の結果は?

その手始めは、岡山県岡山市の岡山大学内に 事務局を置く、岡山実験動物研究会という団体が 1997年10月発行の研究会報に掲載した「アルコール長期飲用(6カ月)による肝臓機能ならびに 脂肪代謝への影響に対するアルカリ性水の効用」 というテーマの研究論文です。

ここでいうアルカリ性水とは還元水を指しています。当時、日本では約300万台の整水器が普及していました。還元水の研究成果としては、消化管 内異常発酵の改善といった報告がすでに出されていました。

これに対し、岡山実験動物研究会は、アルコールの飲用による肝臓機能障害や脂肪代謝に与える還元水の影響を検討しています。

マウスを用いた実験の概要は次のとおりです。①水道水だけを飲ませる群、②市販ウイスキーを水道水で濃度10%に希釈して飲ます群、③アルカ リ性水(還元水)を飲ませる群、④市販ウイスキーをアルカリ性水で濃度10%に希釈して飲ませる群、に分けて検討。なお、土曜日から月曜日の夕方 までを“休肝日”に設定しています。

また、②群と④群には夜間のみアルコールを飲ませ、昼間は希釈に用いた水(水道水とアルカリ性水)だけを飲用させました。通常、(人は)アルコールを夜に飲むものだから、ですね。

これを続けて3ヵ月目と6カ月目に、それぞれ臓器の重量、血液中のGPT、GOT、中性脂肪、総コ レステロールなどを測定しました。

その結果は――。マウスは人間のようにアルコールが好きではないようで(?)、夜間にアル コールを飲ませた②群と④群では、明らかに夜間の摂取量が減っていました。

ほかにも面白い結果が得られています。アルカリ性水だけを飲ませた②群は、他の群に比べて餌をよく食べる傾向があったのですが、その割に体重が極端に増えることはありませんでした。

また総コレステロール値を測ると、アルカリ性水で希釈したアルコールを飲んだ④群のマウスの方が、水道水で希釈したアルコールを飲んだ2群のマウスより低い値になりました。

通常、慢性的なアルコール飲用は肝臓に負担がかかり、コレステロール値も高くなる原因になりますが、この実験では、還元水がその影響を抑える可能性が示唆されました。

還元水は「疲労」に効くのか?

次は、千葉大学大学院・人文社会科学研究科が2009年9月に発行した『千葉大学人文社会科学研究』(現在の『人文公共学研究論集』)に載った「日常生活時の体調および心理状況に及ぼすア ルカリイオン水長期摂取の影響」という、たいへん興味深い研究結果です。

これは健常な大学生50人(男女25人ずつ)に4週間、アルカリイオン水(還元水)を毎日1,500ml 飲んでもらい、①体調、②排便・排尿、③睡眠、④身体感覚の4分類(全28項目)のアンケートと、疲 労に関する自覚症状を、摂取前、摂取2週後、摂取4週後に答えてもらって評価したものです。

日本では数々の栄養素について目標摂取量が設定されていますが、水の摂取量については明記されていません(厚生労働省は「あと2杯飲もう」をスローガンに、1日2.5リットルの飲用を成人に勧めていますが)。しかしアメリカやドイツなどでは、国が推奨量を定めています。

この千葉大の研究においても、飲んでもらうアルカリイオン水の量(1,500ml)の設定の根拠については特に言及されていません。また実験がおこなわれた季節についての記載もありません。

そこで結果ですが、アンケートの全項目で判断すると、摂取前と2週後、摂取前と4週後で、スコアは5%レベルの有意な改善が見られています。全28項目のうち、特に12項目が疲労に関係するアンケートでした。結果は、疲れやすい感じが減少し、立ちくらみやけいれんの自覚は5%レベルで改善。イライラ感の減少も見られました。

睡眠に関してはもともと寝つきの悪さなどの自覚 はない人の方が多く、特に変化はありませんが、朝 の目覚めは5%レベルで有意な改善が見られました。また、1%レベルの有意差で身体が軽く感じるようになった、有意さはないが持久力の改善を感じるようになった、という結果も得られました。

2つの実験の限界と問題点

疲労自覚症状調査においても改善が見られました。ただし、この実験は、本人に分からないように還 元水以外の水(プラセボ飲料)を飲ませることで得られるデータと比較していませんし、被験者が揃って一定の生活状況下にないことも推測する上で問題となります。

しかし、アルカリイオン水が身体的、精神的コンディションの改善に有効であると推測されたことは意義があります。その理由として、アルカリイオン水が水道水よりミネラルの含有量が多いからだ、という 考察もされています。ただし、昨今は意識してミネラル分を摂取する人が増えているため、この実験でミネラルの影響について論じるのは難しいと思います。

また、私見では、この実験に参加した大学生が4週間にわたって、意識して多く水を飲むようになったのか、いままで飲んでいた水をアルカリイオン水に変えただけだったのか、という質問があれば、この結果がアルカリイオン水のためか、単に脱水を改善したことで得られたのか、判断ができたのではないかと考えます。

いずれにしろ、紹介した2件の実験は、マウスを使用したり、わずか50人でしかも設定が不十分だったり、という極めて限定されたものです。その結果をすぐ“普遍的に援用”することは許されません。このことを最後に協調しておきます。

参照

「アルコール長期飲用(6カ月)による肝臓機能ならびに脂肪代謝への影響に対するアルカリ性水の効用」

https://ousar.lib.okayama-u.ac.jp/ja/20658

「日常生活時の体調および心理状況に及ぼすア ルカリイオン水長期摂取の影響」

http://www.gshpa.chiba-u.jp/content/files/annual/annual2009[1].pdf