エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)
株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載
口腔内の衛生管理に還元水は有功か?
口腔内フローラに与える影響を
還元水と水道水で比較実験!
紅葉の季節ゆえか、11月19、20日に、観光客で久々に賑わっていた京都で、日本先制臨床医学会主催の第5回学術記念大会が開かれました。
大会のテーマは「新時代に向けた新しい予防・治療~with統合治療で患者に寄り添う~」というもので、2日間にいろいろな発表がありました。
ほとんどの病気が生活習慣病であり、現在、さまざまな病気が非常に増えていて、保険診療制度で認められた治療では対処できなくなってきています。
そのため、保険診療外のさまざまな治療に注目が集まっていますが、学術記念大会では、その一旦が発表されました。
同学会に所属するわたしもまた、20日に関連する研究結果を発表しました。
■口腔内フローラとは何か?
大会の最後の教育講演で、ルイ・パストゥール医学研究センターの佐藤勉先生が 『口腔と全身の健康に関わる口腔フローラ~機能水の口腔保健学的有用性について~』という演題で講演をされました。
ここでいう機能水とは、AEW (アルカリ性電解水)、つまり還元水のことですから、今回は、その内容について一部ご紹介することにしました。なお、実験の部分については、10月1、2日に都内でおこなわれた第20回日本口腔機能水学会・学術大会で 『毎食後のアルカリ性電解水(AEW)による含嗽(うがい)が口腔内環境に及ぼす影響について』という演題でも発表されています。
そもそも口腔内の環境というのは全身の健康状態と密接に関係しています。腸内と同じように口腔 内にはさまざまな細菌や微生物がいます。これらを口腔フローラと言っています。500種類以上、1000 億個以上存在していて、善玉菌 (有用菌)、悪玉菌 (有害菌)、そしてどちらでもない日和見菌がバランスをとって存在しています。
虫歯や歯周病の原因になる細菌というのは、酸に強い、あるいは酸性環境を好むものが多いのです。逆にそれらは中性からアルカリ性環境下で増殖能力が低下するものが多いこともわかっています。したがって、以前にもAEW(アルカリ性電解水=還元水)により増殖が低下するという実験結果が得られています。
■35人の成人に「うがい」で実験
今回の実験は以下のような方法で実施されました。
AEWはpH9.8を使用し、比較するための水はPW (水道水) を使いました。20歳から 68歳の成人男女35名の被験者には、自分がAEWかPWのどちらを使用しているかを知らせずにおこないました。
具体的には、毎食後 (食後にブラッシングをする被験者はその終了時) に100mlのAEWかPWでうがいを2週間続けてもらいます。その後2週間の間隔を空けて、最初にAEWを使った場合はPWで、最初にPWを使った場合はAEWで、やはり2週間、うがいを続けてもらいました。
評価方法は試験前と2週間終了時の唾液を多項目・短時間唾液検査システムで、虫歯菌、酸性度、緩衝能(かんしょうのう)、 白血球、タンパク質アンモニアを測定して比較しました。
緩衝能というのは、口腔内の唾液が酸性やアルカリ性に傾くと唾液中の重炭酸塩の作用でpHを通常の状態に戻そうとする能力のことです。
また、白血球、タンパク質は歯周病や虫歯で炎症があると高くなります。アンモニアの値は口腔内の清潔度を表わし、高くなると不潔な状態ということです。
■虫歯菌や酸性度が有意に低下
さてその結果です。虫歯菌はPWでうがいをした前後に変化はありませんでしたが、AEWでうがいをすると有意に低下していました。酸性度はPWでは変化なし、 AEWでは明らかに酸性度が下がっていました(つまり中性の方向に変化したということです)。
緩衝能はPWでもAEWも変化はありませんでした。白血球はPWでは変化なし、AEWでは有意に減少していました。
タンパク質も同様にPWでは変化なしで、AEWでは有意に減少していました。
アンモニアはPWでは有意ではないものの少し減少、AEWでは有意に減少していました。
まとめますと、AEWによる毎食後のうがいでは、虫歯歯、酸性度、白血球、タンパク質、アンモニアが減少したということです。つまり口腔内環境が良くなりました。緩衝能は唾液中の重炭酸塩によるものなので、外からの影響は受けにくいと考えられました。
発表された佐藤先生は、今後、さらに効果的な口腔フローラのコントロール法の一つとして、 AEWが口腔フローラの構成に与える影響や飲用 した時の口腔環境の変化などについて研究され ていく予定とのことです。
■飲用+うがいにも還元水を!
現在、腸内フローラについての研究は非常に進んでいますが、口腔フローラについてはまだわかっていないことが多い状態です。
その中で口腔フローラを良い状態にして有用菌を増やすのに必要なものとして、乳酸菌、バランスの良い食事、そしてAEWによるうがいがあげられ、逆に悪い状態にして有害菌を増やすものとしては、口腔疾患、抗生物質、口腔清掃不良があげられます。
質疑応答で佐藤先生が言われていましたが、AEWを飲用するだけでなく、うがいに使うことで口腔フローラの改善につながるのでは、ということが研究の動機の一つであったとのことです。
またアルカリ性ということで重曹水が代用できないかという質問もありました。これについては研究されていないものの可能性は十分に考えられると答えられていました。
ほとんどの病気が生活習慣病だとすると、続けられる良い生活習慣が多ければ多いほど、人はより健康を維持することができるのではないのでしょうか。
実験で有意と確かめられた 「還元水によるうがい」を始め、一つでも良い習慣を増やして悪い習慣を断つようにしてみてはいかがでしょうか。