エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)
株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載
運動時の水分補給に還元水は適正か⁉
バスケットボール選手で実験!
還元水の飲用で有意な結果が
このシリーズの初回の記事の最後に、わたしは “良い湧水はアルカリ性だったのです”と書きました。 系統だった研究がなされているわけではないので全部を把握することは困難ですが、日本でも世界でもアルカリ性の天然水は存在しています。
地球がここまで汚染されていないころは、おそらくあちこちでアルカリ性の良い水が飲めたはずです。しかし現代ではどうでしょうか。
一方、電気分解をして作るアルカリイオン水 (還元水) の弱点は、原水の質の良し悪しによって出来上がりが変わるということです。ならば普通の水道水を電気分解したアルカリイオン水ではなく、天然のアルカリイオン水を飲用したらどういう結果が得られるでしょうか。今回ご紹介するのは、天然のアルカリイオン水の飲用で社会人バスケットボール選手のパフォーマンスを評価したポーランドの大学の論文です。
■バスケットは典型的無酸素運動
バスケットボール選手における高アルカリ性水摂取後の無酸素運動パフォーマンスと、体内で酸性とアルカリ性のバランスを保つ仕組みの酸塩基平衡がどう変化するか、に関する研究が、ポーランド南部のカトヴィツェ市にあるイエジ・ククチカ体育大学のスポーツトレーナー学科でおこなわれ、 International Journal of Food and Nutritional Science』(国際食品栄養科学ジャーナル)の2018年1月号に研究結果が掲載されました。
無酸素運動とはいわゆる瞬発的な運動のことです。バスケットボールは、たとえばボールを保持している選手は5秒以内にプレーをしなければならない、という具合に、ボール保持時間が秒単位で細かく決められています。まして試合中はコートの中を目まぐるしく走ったり止まったりするわけですから、 無酸素運動の連続のスポーツとなります。逆に、有酸素運動の代表はウォーキングやジョギング、長距離のランニングなどです。
■心拍数と血中乳酸濃度が上昇
プロバスケットボールの試合では、選手は最大心拍数の90%まで上昇する激しい運動をおこないます。ちなみに最大心拍数は220-年齢で計算できます。
このような激しい運動を続けると試合が終わるころには疲労物質である血中の乳酸濃度が6-10mmol/lと非常に高くなります。 mmol/1とは、1リットルの体積の中に何ミリモルの物質量が含まれているかを示す単位で、正常乳酸濃度は0.44-1.78mmol/1とされています。
試合中やトレーニング中には適切な水分補給が重要になります。 このシリーズの第18 回では運動後の血液粘度の回復に還元水が有用である論文を紹介しました。 今回取り上げたポーランドの大学の研究は、先述のとおり、アルカリイオン水の飲用が無酸素運動のパフォーマンスと酸塩基平衡に及ぼす影響を評価しています。
研究には25.7±3.4歳の男性プロバスケット ボール選手14名が参加しました。平均身長は190.6±4.8cmで、平均体重が88.5±5.7kg。トレーニング経験は9.8±2.3年でした。
選手は週5回2時間の練習があり、週末に は公式戦がおこなわれました。実験前6週間から実験中にわたって食事は炭水化物55%、タンパク質20%、脂肪 25%で、 カロリーの高い食事 (3255±676kcal/日)を摂取しました。実験前から薬物の使用はなく、毎日8時間の睡眠をとり、実験中はアルコールやサプリメントの摂取も控えました。
11日2.5~3ℓの還元水を飲用検査としては、朝の尿検査と午後のシャトルラン (28mを6回) 後で嫌気性持久テストをおこないました。選手たちには、朝、起床後、トレーニング前後、就寝前に1日当たり2.5~3ℓのアルカリイオン水を6週間飲んでもらいました。対照群の選手たちは同じ条件でミネラルウォーターを飲みました。
実験に用いたアルカリイオン水は天然のものであり、pH9.13です。中等度のミネラルを含み、水の特性は重炭酸 (HCO3-) 炭酸(H2CO3)―ナトリウム(Na+)でした。
安静時にアルカリイオン水を飲むと血液のpHなどが著しく上昇しました。血液の成分がアルカリ性に傾いたということです。しかし酸素濃度は変化しませんでした。
28mを6回走るシャトルランの無酸素運動後にはアルカリイオン水を飲んだ群はpHに有意な上昇がありましたが、 ミネラルウォーターを飲んだ群ではそのような変化はありませんでした。
アルカリイオン水を6週間飲んだ群の尿のpHは、安静時、および身体活動直後もミネラルウォーターを飲んだ群に比べて有意に高くなりました。また、尿比重はアルカリイオン水を飲んだ群は有意に低くなりました (脱水状態になると尿比重は高くなります)
■「無酸素運動に還元水は有効」を証明
シャトルランの結果をみると、アルカリイオン水を飲んだ群は飲む前に比べて有意に改善し、平均 0.71秒早くなりました。運動能力が向上したとみられます。
激しい無酸素運動をおこなう競技者に対するこのような研究はほとんどありません。
しかし、FIBA(国際バスケットボール連盟) ヨーロッパのU20(20歳以下)の選手の75%が脱水状態で大会をスタートしていることが報告されています。
また、成人のNBA (アメリカプロバスケットボール協会)のプレーヤーを対象とした研究では52%が脱水の状態で試合を開始しています。
バスケットボールの公式試合では20分間に2ℓの水分を喪失すると言われています。にもかかわらず水分補給が十分にされていないことも報告されています。
今回紹介したこの研究で、高いpHの水を摂取することは競技アスリートの酸塩基平衡と水分補給に好影響を与えることが確認されました。
秋ともなれば、ちょうど気持ちよく運動ができる季節です。 バスケットボールのような激しい運動はしないとしても、十分な量の還元水を持ち歩くことが大事ではないでしょうか。