電解水ニュース
2020.06
帯広畜産大学の試み
新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)をどう不活化するか―さまざまな研究機関等がいろいろな方法で試みているなか、帯広畜産大学(北海道帯広市)が次亜塩素酸水(酸性電解水)を使った注目すべき研究結果を同大のホームページで公表しました。5月14日(第1報)と 26日(第2報)に掲載されたのは、「獣医学研究部門の小川晴子教授とグローバルアグロメディシン研究センターの武田洋平特任助教らの研究グループが、新型コロナウイルスに対する次亜塩素酸水の不活化効果を証明した」 とする研究結果です。
実験は国立感染症研究所から提供されたウイルスを用い、次亜塩素酸水生成装置のメーカーである(株)アク ト(帯広市)と連携しておこなわれました。以下では「第2報」に基づいて実験の方法と結果を紹介してみます。
実験で使った次亜塩素酸水は次の3種類です。
①pH2.5、塩素濃度74mg/L、
②pH4.5-6.0、同45mg/L、
③pH6.0、同29mg/L)。
ウイルス液とこの3種類の次亜塩素酸水をそれぞれ1対9の割合で混合し、 10分間と1分間、室温で反応させてから、ウイルスの残存量を算出しました。その結果、1分間の反応では、
①はウイルスの検出限界以下まで不活化し、②と③はウイルス が99%以上不活化しましたが、検出限界以下までには届かなかったとのことです。
10分間の反応の場合でも、②と ③は1分間の結果と大きく変わりませんでした。
ただし、ウイルス液と②③の混合比率をそれぞれ1対 15に設定すると、1分の反応時間でウイルスを99.9%以上、検出限界以下まで不活化することができたとしています。
要は次亜塩素酸水を大量に使うと効果あり、というわ けです。「新型コロナウイルス不活化活性は酸性度ではなく含有遊離塩素濃度に大きく依存していると考えられます」という結果も掲載していました。
北海道大学の試み
北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターは、 (株)エナジックインターナショナルと提携し、次亜塩素酸水を使った新型コロナ不活性化実験に取り組みました。
『沖縄タイムス』(5月14日付)によると、pH2.7以下で有効塩素濃度40ppmの次亜塩素酸水と蒸留水の2種類の水に、ウイルス液をそれぞれ1対9の割合で混ぜ、30 秒、1分、5分、10分の反応時間ごとに、それぞれのウイルス数を測定しました。 その結果、蒸留水では10分経過後もウイルス数は横
ばいで変化はありませんでしたが、次亜塩素酸水では、1 ml当たり1,000万個以上のウイルスが、30秒で検出限界以下まで減少し、そのまま推移しました。
北大同センターは、さらに第2弾として、pH5.5で塩素 濃度40ppmの次亜塩素酸水と蒸留水に、各々1対15の 割合でウイルス液を混合し、あとは前と同じ条件で測定しました。すると、蒸留水のウイルス数には変化がなく、次亜塩素酸水を使った方は同じ反応時間で検出不可能となり、不活性化したというのです。
経済産業省関連機関の評価
このように民間レベルではいろいろな研究・試験が実施されていますが、担当官庁はどう受け止めているので しょう。たとえば経済産業省の要請を受けて、次亜塩素酸水等の新型コロナウイルスに対する有効性評価をおこなっているNITE(独立行政法人・製品評価技術基盤機構)は、ホームページに載せた「5月29日現在のファクトシート」で、次亜塩素酸水の新型コロナに対する有効性について、次のような評価を下しています。
「現在、効果の検証作業を、関係機関の協力を得て進めているところです。塩素濃度や酸性度(pH)等の条件によって効果が変化しうるため、評価にあたっては、様々な 条件での検証を行う必要があります。(中略)今後、早期に結論を得ることを目標に、検証作業を続けてまいります」
そもそも厚生労働省は医療分野で「強酸性電解水」、食品分野では「次亜塩素酸水」の名称で有効性の認可・指 定をしています。農林水産省も「電解次亜塩素酸水」という名で農業分野の特定防除資材(農薬)として認可・指定をしました。今回、新型コロナ対策に有効な消毒製品は何か、というテーマを担った経産省にはこうした経緯を踏まえ、科学的で正しい結論を導いてほしいものです。