第23回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

温泉で肌スベスベは“還元効果”なのか⁉

特製装置で生成した還元水を使って

皮膚、髪の毛などで実験してみた!

あなたは毎日、湯船に浸かっていますか?

めんどうくさい、お湯を張ってもすぐに流すんだからもったいない、などといった理由からシャワーだけで済ませていませんか?

日本にはお湯に浸かるという文化があるのにシャワーだけで済ます方がもったいないですね。

大阪市水道局のホームページには“ええことづくめ!お風呂の健康効果とおすすめの入浴法”という記事があり、その中に以下のような一文が載っています。

[14,000人を対象に3年間追跡調査を行ったところ、「入浴回数が週7回」の人たちは 「入浴回数が週0~2回」 の人たちに比べて、要介護になる割合が3割低いという結果が出ています]

加えて、家庭でお風呂に入るだけで、温熱作用、足のむくみ解消や疲労回復に効果のある静水圧作用、リラックスさせる浮力作用、運動療法的効果を得られる粘性・抵抗性作用などがあると記述しています。

詳しい内容は大阪市水道局のホームページ:https://www.city.osaka.lg.jp/suido/page/0 000488972.htmlを参照してください。

さまざまな温泉水の効果

旅行などで行った温泉に浸かると、肌がすべすべしたり、体がいつもより温まってなかなか冷めなかったりした、といった経験をお持ちではないでしょうか?

そもそも温泉は、含まれる成分によって、単純温泉、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉、二酸化炭素泉、含鉄泉、酸性泉、含ヨウ素泉、硫黄泉、放射能泉の10種類に分類されています。

そして必ず、その温泉で効果が得られるとする適応症が書いてあります。

ちなみにわたしがよく行っていた温泉には関節リュウマチ、変形性関節症、腰痛症、神経痛、五十 肩、打撲、捻挫などの症状や、運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、末梢循環障害、胃腸機能の低下、軽症高血圧、糖尿病、軽い高コレストロール血症、軽い喘息または肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)のほか、病後回復、疲労回復、健康増進といった適応症が書いてありました。凄い数で、驚かされますね。

わたしは登山の帰りになるべく源泉掛け流しの温泉に入っていましたが、疲れが取れて翌日の筋肉 痛も起こりにくくなるのをいつも感じていました。これを裏付けるような温泉についての興味深い実験 報告があったので紹介してみます。

生成した還元水を実験に使用

報告のタイトルは「電解還元系の人口温泉水の皮膚および髪に与える効果」で、2005年9月に発行された、日本温泉科学会の『温泉科学』に掲載されました。著者は大河内正一他7名です。

温泉は天然の状態では還元性があります。pHは酸性からアルカリ性までさまざまです。しかし湧き出て空気に触れるとどんどん酸化されますから、源泉掛け流しつまり新しいお湯が常に継ぎ足されている状態が、最も還元性が保持されています。人間と同じで、このどんどん酸化されていく状態を温泉の老化と言います。

現在、国内の7割以上の温泉では源泉の湧出量の減少などのため、浴槽の温泉を濾過して再利用しています。そのさいには殺菌されています。

こうなるとせっかく温泉に入っているのに家のお風呂や銭湯に入っているのと変わらないお湯になってしまっているのです。

証明された酸化抑制効果

大河内らは実験のため、水道水から温泉源泉の特徴である還元作用を有する水を作る還元製造装置を開発しました。

これは、水を電気分解して陰極側で生成されるアルカリ性の還元水と、陽極側で生成される酸性水から活性炭で酸化系活性物質を取り除いた水を混合させた、ほぼ中性の抗酸化能を有する生態水類似の電解還元系の水を作る装置です。

そして、この装置に40度に加温した水道水約200リットル(さら湯)を10分間通水して還元水を製造しました。

実験では、被験者の前腕部を①還元系の温泉水(源泉かけ流し)、②実験装置で作った還元水、③さら湯にそれぞれ5分間浸してORP(酸化還元電位) の変化を見ました。すると、①の温泉水と②の還元水では皮膚のORPは下がりますが、さら湯では逆に上がりました。

そもそも皮膚は加齢によって酸化された過酸化脂質が増加することが報告されています(これが加齢臭の原因になっているのです)。次にこの過酸化脂質の酸化抑制効果があるかどうかを、魚で実験しました。

水道水と実験のために作った装置で生成した還元水に浸した吸水シートでそれぞれ真鯵をラップして冷蔵庫に保存し、TBA試験法で酸化脂質の増加に伴う色素量の変化を観察しました (TBAはチオバルビツール酸のことで、油脂の過酸化生成物と反応して赤色になります。これを用いたのがTBA試験法です)。

魚でも確認された酸化の抑制

水道水で浸した吸水シートをラップした真鯵は色素の増加が見られて酸化脂質が増加していましたが、実験装置で作った還元水を使ったものは脂質の酸化が抑制されていました。

さらに2カ月間にわたって実験装置で作った還元水を使い被験者に入浴してもらった実験結果では、皮膚の弾力性が向上する傾向が見られました。

あるいは、髪の色素を抜くブリーチ処理したダメージヘアをこの還元水に浸した後に乾かし、その後、また浸すという繰り返し実験を複数回おこなったところ、髪の滑らかさとつやの向上が観察できました。

以上により、温泉水とは全く同じではないものの温泉水と同じように還元系を有する水は、浴用で皮膚の酸化および老化抑制に効果があることが確認されました。

もし家庭でこの装置が使えるのなら、毎日温泉に入った時のような心地よさが味わえるでしょうし、入浴による健康効果がさらに上がるかもしれません。