第15回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

電解水ではたして悪臭は消せるのか?

電解水を使った「香害」対策の

研究結果で示されたこと!

「香害」(公害ではありませんよ)という言葉をご存知でしょうか? 柔軟剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤など、強い香りの入った製品による健康被害のことです。

【その香り困っている人がいるかも?】

これは、2021年8月に消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省が作成した合同ポスターのキャッチコピーです(右のポスターを参照)。そこにはこうも書いてあります。

「柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするという相談があります。自分にとって快適な香りでも、不快に感じる人がいることをご理解ください」

「香りの強さの感じ方には個人差があります。使用量の目安などを参考に、周囲の方にもご配慮いただきながらお使いください」

省庁が合同でこのようなポスターを制作しなければならないほど、「香害」はいま深刻になっています。実際、わたしたちの周囲にはさまざまな臭いを消すための人工的な香りで溢れています。

ドラッグストアに入ると、いろいろな商品の臭いが入り混じっています。わたしはとても苦手なので香りのついていない製品を探して買っています。

一方、化粧品の香りが以前より薄れたように思えるのは、人工的な香りが苦手な女性が増えたからでしょうか?

社会問題化する「化学物質過敏症」

こうした香りの大半が合成化学物質です。人によっては症状がきつくなって化学物質過敏症と診断され、どこにも出掛けられなくなるケースさえあります。社会問題にもなってきているのです。

このように香りをつける目的は不快な臭いを消すため、ということが多々あります。そこで香りに頼らず臭いだけを消す方法として電解水を使えないか、というユニークな研究を近畿大学工学部がおこない、論文を発表しています。

そのタイトルは「生活環境中の臭気成分に対する電解水の消臭効果」(『近畿大学工学部研究報告』No.54,2021年,p.13-16掲載)で、著者は野村正人近畿大学名誉教授ほか4人です。

現在、臭気成分としては22種類の化合物が指定されています。そのうちアンモニア臭やニンニク臭を含む12種類の臭気成分をA からDの4グループに分けて、消臭効果を測定しました。

消臭用に使用した「水」は、食塩水溶液(0. 2%以下)を電気分解してできた、酸性電解水とアルカリ性電解水(還元水)、そして精製水の3種類です。酸性電解水はpH3.0~5.0、 塩素濃度20~60ppmのもの。還元水はおよそ0.02%の水酸化ナトリウムを含むpH11~12の水溶液です。比較物質としては 精製水を使用しました。

電解水で消臭効果を測る実験

A~Dそれぞれの臭気成分は次のとおり。●Aグループ[窒素系:アンモニア(NH3)][トリメチルアミン(TMA)] ●Bグループ[アルデヒド系:アセトアルデヒド(AAA)][2-ノネナール(2-NA)] ●Cグループ[脂肪酸系:酢酸(AA)][イソ吉草酸(IVA)] ●Dグループ[硫黄系:硫化水素(H2S)] [メチルメルカプタンMM)][アリルメルカプタン (AM) ][アリルメチルスルフィド(AMS)][ジメチル ジスルフィド(DMDS)][ジメチルトリスルフィド (DMTS)]

結果は次のとおりでした。

Aグループの窒素系臭気成分は水溶性で、どの水でも消臭効果がありました。中でも酸性電解水が一番高く、TMAに対しては99%の消臭率を示しました。

一方、精製水は78.4%、還元水は78.4%でした。NH3も水溶性でどの水でも消臭効果が見られましたが、精製水で74.4%、酸性電解水で78.6%、還元水で64.3%という結果でした。

BグループのAAAはアルコールの分解過程で作られる物質ですから、酒臭い臭いです。消臭率は精製水18.7%、酸性電解水18.7%、還元水12.5%でした。加齢臭として知られる2 -NAの消臭率は、精製水16.6%、酸性電解水20.5%、還元水10.4%でした。

脂肪酸系のCグループはどの水でも97%以上と高い消臭率でした。硫黄系臭気成分のDグループの中では、ネギやニンニクの臭い成分であるAM とAMSに対しては、酸性電解水で90%の消臭率が確認されました。精製水や還元水は消臭率0%でした。

酸性電解水の消臭性を確認

AMとDMTSは最近、食事とは関係なく、ストレスがかかると普通の汗の臭いとは異なる不快な臭いとして発生することが知られています。DMTSについてはどの水も消臭率0%でした。

H2SとMMは口臭の原因にもなる物質ですが、MMに対しては酸性電解水が33.3%の消臭率、精製水は6.7%、還元水は11.1%でした。しかしH2S についてはいずれの水でも消臭率は0%でした。

この報告では酸性電解水が特にストレス臭のAMに有効で、その他、アルコール臭、加齢臭、口臭 にもある程度有効なことがわかりました。

ところでこれらの体臭の原因は、腸内状態とも密接に関連しています。そこで腸の健康を維持するための水分補給としては、還元水の飲用が最適である、ということはこの連載で何度か取り上げました。いわば還元水は「臭いのもと」を消すための有効性があるというわけです。

ほかにわたしがお奨めするのは、日々のストレスの解消のために自然の中で過ごしてみることです。 そうすると自然の香りが心身を癒してくれますし、芳香剤が不快に思えてくるかもしれません(わたし はそうでした)。

第14回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

還元水飲用は糖尿病に効果を期待できる?

還元水飲用群と浄水飲用群で

比較実験した結果を紹介!

糖尿病患者は世界的に増加の一途を辿っています。以下、IDF(国際糖尿病連合)の統計数字を使って紹介してみます。2021年には糖尿病患者は世界で5億3,700万人、日本では1,100万人とされています。2015年の報告では日本の糖尿病患者数は世界9位でしたが、2017年には10位以下に下がりました。しかし2021年の数字では9位に戻ってしまったのです。

こうした糖尿病患者の90%が2型糖尿病で、主な原因は、都市化、高齢化、運動不足、不健康な食事、過体重や肥満です。ひと言では「生活習慣が原因」といえるでしょう(1型は自己免疫疾患が原因とされています)。

日本では2019年に糖尿病関連の医療費は2.6兆円使われていますから、予防と患者の削減は喫緊の課題といえます。

■効果的な運動療法と食事療法

糖尿病は薬物療法以外に運動療法、食事療法が大事です。これは健康的に生活する上でも同様です。

といっても激しい運動をする必要はありません、実は日常生活で十分に動けていれば、わざわざ運動をする必要はないのです。都市化で運動不足になるといわれていましたが、実は最近、地方の人の方が運動不足になることが多いのでは、とされつつあります。

というのも、地方では交通の便が悪いためどこに行くにも車が必要ですが、都会の場合は交通機関が発達しているので、案外、歩いています。注意しないといけないのは、コンク リートの上を歩くとクッションがないため膝を痛める原因になることです。

通勤時もクッション性のあるウォーキング用の靴を履いて、少し歩幅を広くして筋肉を使い歩くとそれだけでよい運動になります。そして休みの日にできれば土の上を歩く機会を作ると、とてもいい運動になります。ただし、整備された芝生は除草剤などの化学薬品が使われていることがあり、体に悪影響を与えることもあって注意が必要です。

糖尿病患者の食事の基本は、間食を控えて食べすぎず腹8分目までにすることです。そしてアルコールは飲みすぎないこと。食事内容としては、インスタント食品、加工食品、冷凍食品はなるべく避けましょう。砂糖を使わず、天然の塩、醤油、味噌、出汁で味付けをしたいですね。昔ながらのご飯と汁物、主菜と副菜の組み合わせが一番簡単で、糖尿病患者にふさわしい食事なのです

■高い血糖値=糖尿病ではない!?

糖尿病というのは血糖値が高いことだと思っている人が多いと思います。しかし食事を摂ると糖が消化吸収されて、誰でも血糖値は上がります。そして膵臓から分泌されるインスリンというホルモンが、血中の糖を細胞の中に取り込んでエネルギーとして使用できるようにします。このインスリンの効き目がうまくいかなくなることを“インスリン抵抗性”といいます。肥満や運動不足などさまざまな原因によって、このインスリン抵抗性が高くなって血糖値が下がりにくくなると、たくさんのインスリンが必要になります。

それが長期間続くと膵臓が疲れてきてインスリンの分泌量が減退し、(2型)糖尿病になるわけです。この場合、運動療法や食事療法を頑張ってもインスリン抵抗性はなかなか改善しません。

■東北大学の実験が示した有益性

その解決策として期待されているのが、以下に示した実験のような「還元水の飲用」なのです。

東北大学高度教養教育・学生支援機構の小川晋准教授(研究当時は東北大学大学院医学系研究科)らのグループは、2型糖尿病患者が電解水素水(還元水)を日常的に飲用することで、高値のインスリン抵抗性に改善効果があることを明らかにしました(論文は日本糖尿病学会『Diabetology International」誌の電子版2021年7月18日号に掲載)。

実験は、インスリン治療を受けていない2型糖尿病患者を対象におこないました。電解水生成器を 還元水だけ出るものと浄水のみが出るものを見た目が分からないように改造し、患者も還元水だけと 浄水だけを飲む群に区分けました。

そして、それぞれに3カ月間、毎日1500mlから 2000mlを飲用してもらいました。そのうえで、還元 水を飲んだ群(23名)と浄水を飲んだ群(20名)で臨床データを比較しました。

そうすると、還元水を飲んだ群は血中の乳酸濃度が低下し、尿中への尿酸の排泄の増加と尿のpHの上昇が見られました。還元水を飲むことによる副作用は認められませんでした。論文の概要では、インスリン抵抗性の改善について2群間の有意な差は認められませんでした。

しかしインスリン抵抗性が1.73以上の高い群だけを取り出して解析したところ、インスリン抵抗性の改善と酸化ストレスの指標の一つである総酸化度(d-ROM)の低下が見られました。つまり活性酸素の働きが鈍ったとみることができます。

また、インスリン抵抗性が1.73未満の低い群については、還元水飲用群だけが総抗酸化度(BAP) が有意に上昇していました。これは抗酸化力が上がったということですから、歓迎すべき結果といえ ますね。

さらに、還元水を飲むと血清カリウム値が上昇したり、水素イオンが上昇したりすることで血中の酸性度が高くなって、さまざまな症状を引き起こすのでは、との懸念は杞憂でした。

また、水素イオンの上昇ではなく、水素分子の増加を示したため、「還元水はアルカリ性の水である」 ことを、改めて裏付けました。以下が実験の結論です。還元水の飲用は、不適切に増加した酸化ストレスを抑制し、インスリン抵抗性を減少させた。インスリン抵抗性が正常な人にとって還元水の飲用は 問題がなく、インスリン抵抗性が増加した2型糖尿病の人にとっては、有益な効果が期待できると考えられる一。

これは、健康維持のために飲む水として還元水が有用である、ということの裏付けの一つになる研究 ではないでしょうか。今後、さらに大規模なスタディ結果の発表が期待されます。