第27回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

スポーツと還元水――果たしてその相性は?

運動時に人の身体はどう変化し

還元水はどんな役割を果たすのか!?

今回は、 学術誌『Journal of Nutritional Health & Food Science』 ( 「栄養・健康・食品科学ジャーナル」 とでも訳せるでしょうか)の2017年4月7日発行号に掲載されたThe Effectiveness of Alkaline Water in Hydrating Athletes」 (アスリートの水分補給におけるアルカリイオン水の有効性)というレビュー記事を参考に、スポーツと還元水について考察していきます。

なお、この記事では還元水と水素水とアルカリ性水を全部ひっくるめてアルカリ性の水とまとめてありましたので、以下、それを踏襲します。

さてわたしたちの体の60~65%が水分ですが、実は女性は男性より水分量が少なく、55%ぐらいか、それより少ないと言われています。

この違いは筋肉量の差異から生じています。筋肉には72~75%の水分が含まれていますから、その量が多ければ当然、水分も多くなるというわけです。ちなみにこの水分はわたしたちの体の貯水槽のような働きをしています。

ホメオスタシスによる体内調整

スポーツをすると当然、筋肉を使います。すると筋肉がエネルギーを発するので熱が出ます。寒い時に体を動かすとポカポカするのはそのためです。そして年齢とともに寒がりになる人が増えるのは筋肉量が減るからです。

ポカポカする程度ならいいのですが、アスリートの運動量はそんなものではなく、ものすごい熱量になります。そこで身体は「ホメオスタシス」を保つために汗を出して体温調節をします。ホメオスタシスとは、健康に生きるため、体温や血糖値などが一定範囲内になるよう調整する生体恒常性のことです。

たとえば氷の上であの薄着で競技をするフィギュアスケーターが、試合終了後に汗を拭いているのをテレビで見たことがあると思いますが、これがホメオスタシスということになります。

また、それだけハードな運動をして汗をたくさんかくと、当然、体の水分が一気に失われますから脱水状態になります。脱水とは怖いもので、体の水分量が2% 失われただけでも、さまざまな認知機能が低下することがわかっています。

激しい運動を2時間もするアスリートの場合、少なくとも3~4リットルの水分補給が必要になります。しかも喉が渇いてからでは遅すぎで、もし可能なら10~15分ごとに水分補給するのがいいと言われています。

しかも、25度以上の温度で運動すると血行動態に障害が起きて電解質が失われ、血液中のナトリウム濃度が低下する低ナトリウム血症を引き起こすことがあります。その症状は、頭痛、嘔吐、食欲不振などから、重症になると昏睡やけいれんなども生じるので、早い対処が必要となります。

運動時にはアルカリ性の水を

ちなみに持久力の必要なマラソンランナー、トライアスロンの選手、サッカー選手などが適切な水分補給をせずに競技を続けると、深部体温が40度以上になってしまい、最悪の場合、死に至ることもあります。

現在はさまざまな用途のスポーツドリンクがあります。大概のものに炭水化物、電解質、ビタミン、アミノ酸が含まれていて、用途に応じ、体液の浸透圧を一定に保つ浸透圧調節もされています。ですが、pHに注目すると、ほとんどの飲料は酸性に調整されています。

ところで激しい運動をする場合、糖を分解してたくさんのエネルギーを作ります。その時にできてくる物質が、皆さんよくご存じの乳酸です。この乳酸がたくさん溜まると体が酸性に傾いて、酸と塩基(アルカリ性の物質)のバランスが崩れます。

そもそも人間は、このバランスを保つことで生命活動を維持できていますから、それが崩れると、元に戻そうとする力が働き、呼吸を速くして二酸化炭素をたくさん排出したりします。また、尿としてたくさんの水素イオンを出そうとします。水素イオンを放出する物質は酸ですから、これにより酸を少なくしようとするわけです。

こう見てくると、運動時に摂取する水は、やはりアルカリ性の方が良いのではということになりますね。

還元水をスポーツの友に!

ところで、酸と塩基のバランスは、激しい運動時だけでなく、食事のさいにも崩れてしまいます。なぜなら、わたしたちが日ごろ食べたり飲んだりするものには酸性度の高いものが多いからです。わたしたちの体はそれを止めてホメオスタシを保とうと、呼吸や腎臓で頑張って調整しているのです。

冒頭で誌名を示した学術誌のレビュー記事を始め、いろいろな角度から進められた研究をまとめると、普段からpH8.5~9.5程度の還元水を飲んでいれば、安静時と運動時の酸と塩基バランスを改善して有酸素運動、無酸素運動時のパフォーマンスを改善させる、と考えられるのです。

もちろん飲む量は運動の種類や環境によって、また個人によって調整する必要はありますが、還元水がスポーツに及ぼす効用は疑いないでしょう。

ここでお聞きしますが、普段、スポーツをしている人としていない人で汗の質が違うと思いますか? 答えは「Yes」です。 実は、普段スポーツをしている人の汗は塩分が少なく、逆に汗をかき慣れていない人は塩分が多くベタっとした汗になるのです。

普段スポーツをしていると、 身体は暑熱順化した状態になっていて、必要なものをなるべく体外に出さずに汗で体温調節できるようになるからです。

これからスポーツを始めようとしている方は還元水とスポーツドリンクに加えて、体内の塩分濃度が薄まるのを阻止するための天然塩も持っていると良いでしょう。常にスポーツをしている人は、運動中の水分補給は還元水だけで十分だと思います。

春を迎え、外での運動の機会が増えます。還元水を「スポーツの友」にしましょう。

第22回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

運動時の水分補給に還元水は適正か⁉

バスケットボール選手で実験!

還元水の飲用で有意な結果が

このシリーズの初回の記事の最後に、わたしは “良い湧水はアルカリ性だったのです”と書きました。 系統だった研究がなされているわけではないので全部を把握することは困難ですが、日本でも世界でもアルカリ性の天然水は存在しています。

地球がここまで汚染されていないころは、おそらくあちこちでアルカリ性の良い水が飲めたはずです。しかし現代ではどうでしょうか。

一方、電気分解をして作るアルカリイオン水 (還元水) の弱点は、原水の質の良し悪しによって出来上がりが変わるということです。ならば普通の水道水を電気分解したアルカリイオン水ではなく、天然のアルカリイオン水を飲用したらどういう結果が得られるでしょうか。今回ご紹介するのは、天然のアルカリイオン水の飲用で社会人バスケットボール選手のパフォーマンスを評価したポーランドの大学の論文です。

バスケットは典型的無酸素運動

バスケットボール選手における高アルカリ性水摂取後の無酸素運動パフォーマンスと、体内で酸性とアルカリ性のバランスを保つ仕組みの酸塩基平衡がどう変化するか、に関する研究が、ポーランド南部のカトヴィツェ市にあるイエジ・ククチカ体育大学のスポーツトレーナー学科でおこなわれ、 International Journal of Food and Nutritional Science』(国際食品栄養科学ジャーナル)の2018年1月号に研究結果が掲載されました。

無酸素運動とはいわゆる瞬発的な運動のことです。バスケットボールは、たとえばボールを保持している選手は5秒以内にプレーをしなければならない、という具合に、ボール保持時間が秒単位で細かく決められています。まして試合中はコートの中を目まぐるしく走ったり止まったりするわけですから、 無酸素運動の連続のスポーツとなります。逆に、有酸素運動の代表はウォーキングやジョギング、長距離のランニングなどです。

心拍数と血中乳酸濃度が上昇

プロバスケットボールの試合では、選手は最大心拍数の90%まで上昇する激しい運動をおこないます。ちなみに最大心拍数は220-年齢で計算できます。

このような激しい運動を続けると試合が終わるころには疲労物質である血中の乳酸濃度が6-10mmol/lと非常に高くなります。 mmol/1とは、1リットルの体積の中に何ミリモルの物質量が含まれているかを示す単位で、正常乳酸濃度は0.44-1.78mmol/1とされています。

試合中やトレーニング中には適切な水分補給が重要になります。 このシリーズの第18 回では運動後の血液粘度の回復に還元水が有用である論文を紹介しました。 今回取り上げたポーランドの大学の研究は、先述のとおり、アルカリイオン水の飲用が無酸素運動のパフォーマンスと酸塩基平衡に及ぼす影響を評価しています。

研究には25.7±3.4歳の男性プロバスケット ボール選手14名が参加しました。平均身長は190.6±4.8cmで、平均体重が88.5±5.7kg。トレーニング経験は9.8±2.3年でした。

選手は週5回2時間の練習があり、週末に は公式戦がおこなわれました。実験前6週間から実験中にわたって食事は炭水化物55%、タンパク質20%、脂肪 25%で、 カロリーの高い食事 (3255±676kcal/日)を摂取しました。実験前から薬物の使用はなく、毎日8時間の睡眠をとり、実験中はアルコールやサプリメントの摂取も控えました。

11日2.5~3ℓの還元水を飲用検査としては、朝の尿検査と午後のシャトルラン (28mを6回) 後で嫌気性持久テストをおこないました。選手たちには、朝、起床後、トレーニング前後、就寝前に1日当たり2.5~3ℓのアルカリイオン水を6週間飲んでもらいました。対照群の選手たちは同じ条件でミネラルウォーターを飲みました。

実験に用いたアルカリイオン水は天然のものであり、pH9.13です。中等度のミネラルを含み、水の特性は重炭酸 (HCO3-) 炭酸(H2CO3)―ナトリウム(Na+)でした。

安静時にアルカリイオン水を飲むと血液のpHなどが著しく上昇しました。血液の成分がアルカリ性に傾いたということです。しかし酸素濃度は変化しませんでした。

28mを6回走るシャトルランの無酸素運動後にはアルカリイオン水を飲んだ群はpHに有意な上昇がありましたが、 ミネラルウォーターを飲んだ群ではそのような変化はありませんでした。

アルカリイオン水を6週間飲んだ群の尿のpHは、安静時、および身体活動直後もミネラルウォーターを飲んだ群に比べて有意に高くなりました。また、尿比重はアルカリイオン水を飲んだ群は有意に低くなりました (脱水状態になると尿比重は高くなります)

「無酸素運動に還元水は有効」を証明

シャトルランの結果をみると、アルカリイオン水を飲んだ群は飲む前に比べて有意に改善し、平均 0.71秒早くなりました。運動能力が向上したとみられます。

激しい無酸素運動をおこなう競技者に対するこのような研究はほとんどありません。

しかし、FIBA(国際バスケットボール連盟) ヨーロッパのU20(20歳以下)の選手の75%が脱水状態で大会をスタートしていることが報告されています。

また、成人のNBA (アメリカプロバスケットボール協会)のプレーヤーを対象とした研究では52%が脱水の状態で試合を開始しています。

バスケットボールの公式試合では20分間に2ℓの水分を喪失すると言われています。にもかかわらず水分補給が十分にされていないことも報告されています。

今回紹介したこの研究で、高いpHの水を摂取することは競技アスリートの酸塩基平衡と水分補給に好影響を与えることが確認されました。

秋ともなれば、ちょうど気持ちよく運動ができる季節です。 バスケットボールのような激しい運動はしないとしても、十分な量の還元水を持ち歩くことが大事ではないでしょうか。