第16回Dr. マリが綴る「水ご健康」AtoZ

エナジックインターナショナル顧問
医学博士 上古眞理(じょうこ まり)

株式会社エナジックインターナショナル 広報誌 『E-FRENDS』より転載

マウスの実験が示した水素の脂肪肝抑制機能

水素が豊富な還元水の飲用で

非アルコール性脂肪肝に対処可能?

「脂肪肝」という名称を聞いたことがあるでしょうか? 肝臓の5%以上の細胞の中に脂肪が溜まっている状態のことです。エコー検査をすると肝臓が白く輝いた映像になるので、健康診断などで指摘されたことがある人もいるかもしれません。

この脂肪肝——よく知られているのがアルコールの飲み過ぎで起こるものです。しかし最近は、アルコールを飲んでいないにも関わらず起こる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が注目されています。これが進行すると非アルコール性脂肪肝炎(NAFLD/ NASH)になりますが、昨今では、ウイルス肝炎を合併しない肝ガンが増えている主因と考えられています。

危険因子としては、肥満、糖尿病、脂質異常症、男性(であること)などがあげられます。 2009年から2010年に健康診断を受けた5,057人を対象に検討したところ、NAFLD /NASHは男性41.0%、女性17.7%に認められています(『日本消化器病学会雑誌』第 114巻・第5号「NAFLD/NASHの疫学とリスクファクター」より)。

還元水の持つ各種保護作用

脂肪肝は生活習慣を正すことで正常に戻すことができます。では、機能水にもその有効性があるのか、ということについて実験報告があったので紹介してみましょう。「高脂肪食非アルコール性脂肪肝モデルマウスにおけるアルカリ電解水および水素水の効果について」という論文がそれで、イスラエルのテルハイ大学が2018年12月に発行した『World J Gastroenterol』に掲載しました。

電解アルカリイオン水(EAW = 還元水)には抗肥満作用、抗酸化作用、抗糖尿病作用、肝保護作用があることが、各種学会等でこれまでに報告されています(本連載でも紹介してきました)。

還元水の持つ高いアルカリ性と低い酸化還元電位(ORP)という特性が、この作用をもたらしているのでは、とされてきました。ORPは水の酸化力または還元力の強さをV (ボルト)で表示する、エナジック販売店の皆さんなら関心の高い単位ですね。この数値がマイナスなら還元力が優れている、というわけ です。

最近ではこのほかにH2(水素分子)の役割も注目されています。以下に紹介するのは、還元水を使った実験A、および水素が豊富な水素水を使った実験Bとその結果です。

実験Aでは、餌と水分の摂り方で、マウスを以下、4つの群に分けました。①普通食と通常の水(市販のミネラルウォーター)、②普通食と還元水、③高脂肪食と通常の水、④高脂肪食と還元水。

ここで使用された還元水は(レベラックシリーズのような)連続通水式ではなく、水を溜め隔膜電解法でおこなう方式の生成器で作られました。

連続通水式の生成器の場合、水の種類や水量に応じて還元水のpHやORP値、また水素濃度は常に変化します。そこでこれを一定の条件に設定するため、水を溜めて生成するこの隔膜電解法の機械を使ったのです。

この生成器で市販のミネラルウォーター (pH7.8)を3時間連続電解してできた陰極の還元水(pH = 11±0.48、ORP = -495±27mV、H2=0.2mg/L)を実験に使用しました。

その結果ですが、高脂肪食を摂ったマウスは12週後には普通食を摂ったマウスより72%も体重が増加し、肝臓は脂肪肝になっていました。しかし、還元水と通常の水との間の差は認められませんでした。

還元水は作り立てを飲もう!

次が水素水を飲ませる実験Bで、高脂肪食の餌を与えたマウスを、飲ませる水の種類で3つの群に分けました。①通常の水、②低濃度の水素豊富水、③高濃度の水素豊富水です。

この水素豊富水は、マグネシウムを水に入れると水素分子が発生する性質を利用して作り、濃度は、高濃度水素水が0.8mg/Lで、低濃度水素水は0.3mg/Lに設定しました。pH は約8.0に調整し、水素濃度を一定に保っため、毎日測定されました。

また、平均の飲用量は高濃度の水素水のマウスで8.83mL/日、低濃度の水素水のマウスは3.66mL/日でした。通常の水を摂っていた対照群のマウスの飲用量は3.34mL/日でしたが、いずれも餌の摂取量に差はありませんでした。

結果を見ると、まず体重については、高濃度の水素水飲用のマウスは他のマウスに比べて増加は少なく、脂肪組織の増加も少ない結果となりました。肝臓の組織を観察しても同様な結果が得られました。

同時に非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の関連遺伝子の発現についても検査を実施しましたが、高濃度の水素水を飲用したマウスのみに脂肪酸代謝関連遺伝子の発現の抑制が認められました。また、脂肪組織から血液中に分泌されるアディポネクチンというホルモンの増加が認められました。これはメタボ抑制に有効性があるとして注目されているものです。

高濃度の水素水を飲用したマウスの飲水量が他に比べて3倍にもなっている理由は分かりません。 しかし結果として低濃度の水素水の飲用マウスに比べ、(濃度と飲水量を掛け合わせると)H2の摂取 量は約8倍になっています。

いずれにしろ、この結果を見るかぎり、豊富な水素が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発症抑制に関連している可能性が示唆されたといえます。

他方、実験Aでは、pHが十分に高くORPが低い還元水を使用したにも関わらず、NAFLDとの関連 性は認められませんでした。脂肪性肝疾患の抑制のために大切なのは水素ということになります。

これまでも溶存水素には肝保護作用があるのでは、という説が存在していました。豊富な水素水の 飲用マウスを使った実験Bは、それを裏付けたといえるかもしれません。ただし、水素濃度が高い必要のあることが分かりました。

還元水に含まれる溶存水素にも同じことが言えます。電解水生成器で生成した直後の還元水をコップに入れてみると、微細な泡がたくさん出ているのが見えます。これが溶存水素です。この水素はガスですから時間と共に抜けます。効果的に還元水を摂取するためには、なるべく作り立てを飲みたいものです。